RA168Eエンジン、ホンダF1第二期1.5Lターボエンジンの内部構造
二期、セナ、プロスト、マンセル、ベルガー、中島などが激し
しくしのぎを削ったあの時期、1.5Lターボ時代だといえる。こ
れがターボ禁止の3.5Lの自然吸気時代となるとホンダの神通力
は半ば消え失せ、最初はV10で始めたがフェラーリのV12に圧
倒され、V12 出ないとダメなのかとV12に替えたら、今度が
愚直にV10を通したルノーの圧倒的速さになり、結局、勝てな
くなったホンダは経済状況を理由にF1から撤退した。
ホンダF1第二期はスピリットホンダ、ドライバーはヨハン
ソンでイギリスの草レースに登場したのが最初だった。で、
しばらくしてウィリアムズにエンジンを供与、その初戦で、
ロズベルクがいきなり5位入賞と力を見せつけた。
で1.5Lターボ時代、マクラーレンホンダ時代、16戦中15勝
なんて圧倒的な年もあった、その後2.5bar制限、燃費制限が
課せられ、その中でも勝ち続けたが以前の強さは失せていた
。その最後のエンジンがRA168Eである。
最初の1.5Lターボは1983年のスピリット・ホンダであり、
RA163E 、90.0mm✕39.2mmの超ショートストローク、80度
のバンク角度、このスペックは84年度にも受け継がれたが、
85年のRA165E ではあまりのビッグボアのターボエンジンが
耐久性に難があると分かり、82.0✕47.7ニヤやロングストロー
ク化した。
しかし86年からは燃料制限が厳しくなり、220Lから195L
に制限されたため、燃焼効率の改善を図るために79.0✕50.8
というさらにロングストローク化が図られた。此れが88年の
RA168Eまで持ち込まれた。バンク角は最初から最後まで80度
、振動が多いエンジンだった。
ホンダF1ターボのシリンダーブロックはマンホールと同じ
材質のダグタイル鋳造である。鋳鉄を利用することで剛性を
高く出来、比熱も小さく出来て燃費の向上が可能となった。
シリンダーヘッドはアルミ合金、ヘッドカバーやオイルサ
ンプはマグネシウム合金を使用し、エンジン重量は146kgで
収まった。
圧縮比は9.4、ミラーサイクルエンジンと推定される。過給
圧制限があるため、その過給圧を最大限に利用した掃気効果
を狙い、排気バルブは遅閉り、吸気バルブも遅閉りでミラー
サイクル効果を狙っていたという。
①鋳鉄製のシリンダーブロック(下から)
この材質が使えるように鳴ったのはコンピューターによ肉厚
管理のお蔭であり、V6でクランクピンはオフセットとなしだか
らジャーナルは4個となる。
②シリンダーブロック 上から
ピストン裏への冷却用で使うオイルジェットはVバンクの
中央部にあり、ピスト位置に関係で伸びだしていない。
③クランクシャフト
クランクピンは120度に振り分けられている。Vバンクが80度
であるため振動が大きかった。クランクのバランス取りとして
部分的に重くする必要から、タングステン鋼を押し込んだ、
④クランクのラストメタルは最後端のジャーナル部にある。
⑤ジャーナル部のベアリングキャップの締め付けボルトは4本
あり、 太さのサイズは2種類ある。
⑥シリンダー壁はピカピカに磨き上げられている。
★コンロッド、ピストン周り
①6気筒分のコンロッド、ボアが79mmだからクランクピン径は
如何にも太い。
②コネクティングロッドはチタン合金製、応力が集中しないよう
にと研磨加工している。
③ピストンの上面はフラットでバルブリセスがある。鍛造だが市
販車のようなクーリングチャンネルがない。強度上の問題からと
いう。ピストンリングは圧縮二本、オイルが一本。
★カムシャフト、ロッカーアーム周り
①ヘッドとカムシャフトは2階建ての設計、ヘッドに直接でなく
、カムホルダーとしてのベースがある。カムの幅は非常に狭い。
②カムシャフトは削り出し、リフト量がかなり多い。開き側と
閉じ側の曲線を替えて出力向上を狙っている。可能ならしめたの
はロッカーアーム方式としたため。このカム曲線で、バルブ角が
大きく開いている時間を長く出来る。
③一気筒文のロッカーアームブロック
④バルブクリアランス調整用のキャップ
⑤バルブステムの上にバルブクリアランス調整用のキャップを
載せる。
⑥一番シリンダーの上死点マークなどないので、プラグ穴に
ダイアルゲージを差し込んで上死点を出している。
⑦カムギアにはマークが刻印されている。カムホルダーと一面
になればOKという。
⑧カムキャップは流石にごつい、締め付け箇所は3箇所ある。
★シリンダーヘッド周り
①ダイレクトプッシュ方式でないのでタペットホールはない。
バルブガイドはブロンズ製でステムシールが付いている。
②エキゾーストポートはヘッド部分では2ポート、排気速度
を高めたままタービンを回すようにしている。
③燃焼室は見たこともないような形状、バルブシート間が
盛り上がっている。バルブを付けるとこれがフラットになる。
④バルブは吸、排気ともチタン合金製。ナトリウム封入。
バルブ鋏角は32度とやや狭い。狭角によって燃焼効率上昇を
狙っている。
⑤バルブコッターの組み付けには、バルブリフター以外は
使わない。
この記事へのコメント
この辺は日産の古典エンジンL型のカムシャフトと同じ理屈です。
クランクシャフトのカウンターウェイトに埋め込まれているのはタングステン鋼ではなくタングステンです。
タングステン鋼の比重:11.0〜15.0 g/cm³
純タングステンの比重:19.3 g/cm³(純金とほぼ同じ)
現在のF1エンジンはレバー比ほぼゼロの短いロッカーアームタイプを採用。その効果は直打のバルブリフター方式よりバルブ周りの慣性重量を軽減できるんですよね。
ニューマチックバルブの採用はされていないにしても、ロッカーアームで慣性重量軽減させる技術をこんな昔から使っていたとは驚きでした。
ベリリウム青銅は有害ながら軽量かつ高強度で冷却性に優れるのは有名ですね。記憶ではメルセデスF1(イルモア製)のエンジンブロックがこの材質で作られていて、フェラーリの講義で使用禁止になった記憶があります。
現在のホンダF1パワーユニットでは独自開発の熊メッキを採用してるというのだからホンダの技術力は本物ですね。