河盛好蔵『フランス文壇史』フランス第三共和制の文学全盛時代、

ずである。フランス第三共和制時代は歴史は戦乱で激動で
あったが、文学においては全盛、というべき時代だった。
史上空前の文学全盛だったと思える。個性的で魅惑的な文学
作品が続々と書かれ、フランス文学に黄金時代だった。とも
各成果の文学者、作家はフランス文学を学ぶのに没頭したと
いう面はある。日本の文学者をみても、即座に次々に思い浮
かびそうだ。
で、何よりもフランス文学者だった河盛好蔵、関西人だっ
たが、フランス文学黄金時代を教師的に述べるのではなく、
その裏面、裏窓から覗き見したという風情のユニークなフラ
ンス文学についての本である。その、豊富な知識、全く豊富
な知識、学識からさまざまな作家の生活や文学上の事件を本当
に丹念に調べ上げて、そのフランス文学全盛の陰の部分を綴っ
ている。あの洗練され、高度に磨きあげられている名作の陰に
潜むもの、作家の苦難と哀愁、野心、落胆、絶望をさすがの才
筆で述べている。
よくマラルメとはきくが、非常に難解だという。詩人である
があの難解さを生んだ生活とは、さらにシュールレアリスムス
の芸術家たち、特に詩人の本音の部分、野心と云うべき本音の
部分、それについての疑問に河盛好蔵でなくては賭けないと云
うほどの明快に解き明かしている。単に表舞台を見ていたので
はとうてい理解しがたい部分を、裏面からのアプローチで初め
ての解明というべきか。
作家のそれぞれのエピソードも興味津々で、女性作家のコレ
ットが舞台に出ていた頃、まあ、ミュージックホールだが、若
き日のモーリアックが彼女の舞台を見て全くべ幻滅した、とか
ロティとルーマニア王妃に恋愛とか、日本人を徹底して馬鹿に
したロティの本音の部分だろうか。河盛好蔵のフランス文学へ
の知識は日本人としては空前絶後かもしれない。
で読み方は、アプローチとしてそのフランス文学の楽屋裏か
ら、文学理解を深めるという方法とさらに著名な作家、詩人た
ちの精神的状態、嫉妬、野心、善意、友情を辿っていくこと、
これもフランス文学の人間喜劇と云うべきか、その多彩な読み
方をも可能にしたのは河盛好蔵の含蓄あるフランス文学の知識
ゆえである。著名な定評ある本だが毛嫌いせず、まずは購入する
ことである。

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