ジョン・ブレイン『年上の女』1970,河出書房新社、福田恆存訳、一人称の現代版『赤と黒』?

に出たジョン・ブレインの『年上の女』福田恆存訳だが「日
本の古本屋」サイトで探すと三島由紀夫所蔵もある。もちろ
高いだけだから間違っても買ってはいけない三島所蔵だが、
まあ読んだのかどうか。
あらすじは、ジョー・ランプトンは復員した青年であり、
故郷の町を捨てて中部イギリスの小都市の市役所の下っ端
職員となる。惨めな下層労働者階級の家庭に育った彼が夢
見るものは、単純にブルジョワジーの生活であり、高級ス
ポーツカー、金髪美女、リビエラの別荘、・・・・
それを目標にジョーはまもなく、この都市の有力者の娘
と恋仲になる、だが同時に彼はもうひとりの女性を好きに
なった、アリスがそれで年上の女性だった、。アリスには
音tがいる、しかすジョーとアリスの愛は燃え上がった、いか
に抑えようとしても二人の激情は燃え盛るばかり、ドーセッ
トの海岸で過ごした四日間は二人の愛の絶頂だった、がそれ
は終末でもあった。
ジョーはもうひとりの金持ちの娘、スーザンとの恋仲を
断ち切れなかった。利欲のためというより、利欲と愛情の
区別もつかないほど、盲目的な愛情だった。金持ちの父親
は二人を結婚させる、だがアリスはそれに絶望し、婚約を
ジョーから告げられて泥酔し、車を運転し、崖に激突し、
死亡する。
多少、現代版『赤と黒』のようでもあり、スタンダールの
方は若い青年主人公が死刑を宣告される。こちらは三人称で
なく、ジョーが語るというものだ。その語り口に何の後ろめ
たさもない、全くあっけらかんと率直に自分の身辺に起こる
ること、悲喜劇を語る。徹頭徹尾自分を疑おうとしないので
ある。たまには自分の行為を皮肉る余裕だ。
あの時代の「怒れる若者たち」の作家群にあったブレイン、
この作品はそれらの中でも白眉とされる。イギリス小説にあ
里勝ちなギクシャク感はさほどないようなきがする、ただし
翻訳、福田恆存訳が珍しく悪くない、拾い読みでもいいから
読む価値はある。でもスタンダールと比べるのは気の毒とい
うものだ。英語というだけでも劣ってしまう。

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