宝塚、懐かしの写真館(215) 城玲子(宝塚24期)「代役の気分」昭和11年11月号『歌劇』

 
 9月30日、朝の食堂で小夜福子さん(月組組長)から「ちょ
っと」と呼び止められ、見えられたのは「ゴンドリア」の
ジャネット役の配役の変更で代役のわたしに変更でした。
「え、私が」と言ってドキドキして絶句、それからが大変
でした。楽屋で相手のロザリア役の碧川襄さん、ハチ坊に
「ちょっとあなたが洗濯婆さんよ」、「ねえ、婆さんの声
てtどうしたらいいの」、「声をどうしましょ、ふたりと
もドラ声はね」、「喧嘩の役よ、」と側から門野さん、
「地で行ったらいいのよ」、「ひどい」

 口は大したもので、その日の朝に渡してくださるセリフを
想像して小さなうぬぼれ、大きな不安、で心臓が高鳴るばか
り。

 10月1日、朝から何度もお稽古したんですが、全然、落ち着
きません。こっちうろうろ、あっちうろうろ、ブツブツいって
いたら我が女形の登場となりました。

 もうすぐ出番、胸がドキヂキ、お稽古は出来たけど、もし出
来なかったらどうしよう、その時の私の哀れな顔、でももしか
したら出来るかもしれない、

 深呼吸し、落ち着いて、さあ舞台、何だか頭がカーっとして
きた。あ、セリフがまわってきた、変な声が出た、さ、怒って
カゴを投げつける捨て台詞、やれやれ、終わった。

 一体何をやったのやら、さっぱりわからない。誰が何処にい
たのやら、相手のハチ坊は?記憶にない。何もかも忘れた。次に
舞台に出たときはすっかり気抜けして、はずかしくもあり、帽子
で顔を隠して登場、

 つまり、出来不出来を云われるのが怖くて、終わって外に出た
らさわやかな秋風、ほっとしました。途中であった編集部の横田
さんが「今日見たのは、あれは男、女、どっち?」で気持ちがぺ
さんこに。そこで苦心談をひくさり、でも横田さんだけが男女が
わからないはず、と思っていたらまた途中であったひと、「ふた
りとも男でしょ」いささか、くさってしまった。でもたまに江戸
っ子でべらべら云うのは楽しいし、女で女を演じてなぜ女に見え
ないの?顔だってこれでも女らしいし、目はキリッとしていて、
女であることを説明し、相手の顔をみたら、まだ怪訝そうな顔、
「だって男みたいじゃないの」まだ云い続けてます。名前だって
ジャネットなんだから、わかるはずよ。ハチ坊とふたりで日々、
女らしく見せるべく頑張ってやろうか。でも意地悪な質問が終わ
らない。

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