牧屋善三、本名は岡田五郎、作家・岡田三郎の弟、その出世作『限りなき出発』


 岡田三郎は小樽出身の作家で著名だが、その弟、岡田五郎、
兄とは年は離れていて明治40年、1907年生まれ、で1977年
5月11日没、兄の三郎は明治23年、1890年生まれだった。半ば
三郎が親代わりを務めていたようだ。明治学院普通部時代から
文芸部に加入し、詩や小説を試作、高等部からは左傾化し、か
なり極左的な『文化批判』という雑誌も出したと伝えられてい
る。ちょうど、岡田三郎の代表作『三月変』にもある三・一五
事件の大弾圧で29日間、拘禁され、高等部も中退となった。

 でその最愛の末っ子が特高に逮捕拘禁されるというのは母親に
大きなショックを与えて、急死した、その顛末が岡田三郎の『
三月変』となった。その後は大宅壮一のもとで翻訳の仕事や出版
に携わったが、昭和10年ころ、永田キングのレヴュウ一座の座付
き作者として関西を巡業、昭和12年暮に見切りをつけ、東京に舞
い戻るまでの劇団生活の、その裏の世界を克明に綴って、出世作
となった単行本「限りなき出発」昭和15年、三和書房、「限りな
き前進」という映画名にあやかったのだろうか。映画もどん詰ま
りを描いて皮肉なタイトルだったが、牧屋の作品も、単行本の
タイトルも皮肉なものとなった。ひょうひょうと都落ちしていく、
芸人生活の哀愁、哀感、それが秋風のように流れているような作品
である。

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 昭和13年ころに浅草の劇団に関わり、毎日のように高見順、倉橋
弥一などと浅草六区を歩き回っていた。やがて明石書房に関わり、
青年芸術派を結成、以後数多くの単行本、「秋の夫婦」、「世間し
らず」、「たそがれの愛」、「愛と真実」、「春の雲光」「明日ひ
らく花」、「歴史の夜」、「新生」などを出した。戦後は実質、作
家生活は休眠状態だったようだ。

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