『殉教者、戦争の中の魂の苦悩』1965,リチャード・E・キム、朝鮮戦争における苦悩


 1965年、弘文堂から日本語訳が出た。あまり紹介されて
いないようだ。いきさつはアメリカ在住の朝鮮人が、英語
で書いた『殉教者』という小説を発表し、それが大変な評
番となったとは日本でも多少は知られていたようだ。

 1950年6月25日に朝鮮戦争は北の侵攻がきっかけで、そ
の前夜、北朝鮮では平壌のキリスト教会の牧師14人が連行
され、12人が拷問で殺害され、申牧師と韓牧師の二人だけ
が殺害を免れた。

 その後、戦争の進展で平常が米軍の占領下になったとき、
生き残った二人に対し、12人の「殉教」がつ追求された。
「彼らは果たして、最後まで神を信じて従容として死んだ
のか。それとも、・・・・」でらう。

 このテーマは遠藤周作さんの文学では中心的テーマとも
いえるが、しかし、12人がなぜどういう理由で殺害された
のか、無論、推察はつくが、それは曖昧なままである。

 「牧師たちは、共産党への入党申込みに署名することを
要求されたが拒否したので、・・・・」

 これはアメリカ向けの筋立てにはなるが、現実、共産主義
体制下で共産党入党がいかに困難であるのか、これくらいは
知識として知っておくべきで、こんな荒唐無稽が文学の世界
であっても通用するはずはないだろう。

 アメリカでえらく評判にはなったが、朝鮮戦争があれ程激し
くても、アメリカでは「忘れられた戦争」と言われたように、
アメリカ人はそのような事情に全く通じておらず、いわばア
メリカ人の無知に支えられたアメリカでの成功だった、と考え
るしかない。

この記事へのコメント