アラン・ガーナー『ふくろう模様の皿』評論社、幻想的でも児童文学とは思えない厳正さ

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 この物語は実はウェールズの伝説がベースになっている。
その伝説とは、魔法の力が二重にも三重にも絡み合う、まっ
たく複雑怪奇なものだが、作者のアラン・ガードナーによる
と「この伝説を読んだとき、これは単なる不思議な話ではな
く、互いに身を滅ぼし合う人間の悲劇。要は自分たちの落ち
度からではなく、無理やり、結び付けられたために、互いに
相手を破滅させる悲劇だとわかった」といっている。

 魔法使いが花から女を作ったという伝説があるウェールズ
の谷間の村に、イギリス人のロジャとアリスンという義理の
兄と妹、さらに土地の少年、グウィン。それぞれ個性的に描
かれているようで、伝説の曖昧模糊さに溺れてはいないと思
える。

 だがその背景に神話時代から続くという土地の呪い、とう
いう薄気味悪い神秘さがそこはかと匂う。グウィンの母親に
も、その周囲にもこの花から創られ女と同様の悲劇的な三角
関係があって、それがこの若い三人に降りかかる。作者はこ
の物語を、ほぼ会話ばかりの戯曲に仕立てて、きわめて暗示
的な手法で、説明はほぼ抜き、緊迫したファンタジーとした。
 
 聞けばこの作品は、イギリスで権威あるカーネギー賞を
1967年に受賞されているという。翻訳されている文章から
も、全く妥協なき現代文学となっている。

 実は『ふくろう模様の皿』は児童文学のジャンルなのだ。
これを最高の権威かもしれない、カーネギー章受賞作品と聞
くととまどうかもしれない。翻訳のスタンスも極めて厳正だ
と思える、一字一句、丁寧に翻訳だが、日本の読者には現実、
非常にとっつきにくく、子供が読むとは思えない。正直、訳
文がもうちょっと融通を効かせてくれたらという思いはする。

作者、アラン・ガーナーは1934年生まれ、88歳、作品原題
Owl Service、非常に詳しい、ウィキの英語解説がある

 無論異なるが、ラフカディオ・ハーンの作品を児童文学と
みなせるか、とのテーマも浮かぶ。

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