宝塚、懐かしの写真館(248)直木真弓「秋の日記・道成寺」昭和7年12月『歌劇』

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 直木真弓:10月15日、秋雨が降っているらしい。うつらう
つらしていたら、隣の菅つや子さんが寝たまま「真弓ちゃん、
あんたその雑誌を読んだ?」と尋ねるので「ううん、まだ」
「そのヒロインがあなたに似ている感じやね、卵をシャボン
で洗ってゆでるんだって「ふん」、・・・・・元気よく起き
たら6時半、この数日、なんでこんなに早く目が覚めるのやら、


 楽屋で鏡の上のダリヤが荒らされている。「皆さん、お稲荷
さんのおあし持ってきてください」と班長が下から怒鳴ってい
る。気を利かして末広栄子さんが大きな声で「班長さんがお稲
荷さんの、あのお香をもってきてください」というので大笑い
でした。妹が弁当を食べて「はい、おねえちゃん食後の果物」
とリンゴを持ってきてくれた。私は千足ちゃんが買ってきてく
るとおもっていたんですが。

 特別公演が始まって楽しみが増えています。汐見洋子さんと
二人で毎日、一日も欠かさず天津乙女さんの「奴道成寺」を見
るんですが、下手で見たり、舞台の上手で見たり、なんてきも
ちよいきびきびした踊りなんだろうと思ってじっと見ていたら、
涙がこぼれるほど感激させられる。見つめあう汐見さんとほっ
とため息。いつかあんな風におどれたら、と思いました。

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