大庭みな子『胡弓を弾く鳥』、読むと気持ち悪さと重苦しで頭痛がしそう、失敗作か

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 『三匹の蟹』で華々しく文壇デビューした大庭みな子、
父親が海軍軍医で田金属で各地の学校に通った、広島の
高女がメインだろう、最後は新潟の高校だが、高校レベル
でこれほど目まぐるしく転校するものなのだろうか?最終
学歴は津田塾大である。1996年に脳梗塞、以後車いす生活、
2006年、76歳で没、かなり絶頂期に脳梗塞で失速した。

 で、その作品『三匹の蟹』は1968年、1972年の作で『胡
弓を弾く鳥』なんだか、生き物の名前をタイトルに入れる
傾向があったのだろうか。ちょっと気持ち悪い。

 『胡弓を弾く鳥』ラストは二人のホモが毒をあおって死
ぬ、「二人は首を折って、片羽を前に突き出して、うつむ
いて胡弓を弾いている二羽の鳥のようであった」

 この胡弓を弾く鳥、フィドラーの鳥は冒頭に述べられてい
る。黒い白鳥、つまり黒鳥のことらしい。だからこの作品は
死んだ二人のホモは死んで黒鳥になった、ということだ。こ
れも無論、全くの独走であるはずはなく、中世の伝説「白鳥
の騎士」に由来する。アーサー王伝説にある。

 だがこの小説は。本当に文体は重い、暗い。議論が多く、い
やに装飾的な部分が目立つ、すなり気持ちよく読めるものでは
ない。純文学志向のこれが多少は特権なのかどうか。

 ストーリーも清廉潔白と対極である。

 日本のとある山奥の別荘地の沼のほとりで、一人の学生(盾、
じゅん』が望遠鏡で一羽の黒鳥をのぞいている。そこて若い女
(柊、しゅう』を連れた男(堯、ぎょう』が通りかかって、盾と
白鳥の話をし、盾w二人の住む別荘の八角堂に案内する、柊と堯
は新婚夫婦、堯は貴族の末裔でエジプトの墓の研究家、柊は財産
家の娘、盾は法科の学生、この三人を中心として伝説、sagaは
展開する、・・・・・。

 一年後、堯夫婦には娘が生まれる。盾は八角堂へ通ううちに、
堂上華族によるパーティーが催された。そこから除け者んいされ
た盾だが、堯が不意に現れ、胡桃の木のそばの山小屋で堯に誘惑
sれる。女役は堯で、堯と柊の関係は複雑らしい。

 盾は大学を出て弁護士になった。今度は再会した柊に誘惑され
た。定期的に逢引きし、カモフラージュのために盾はこの家の家
庭教師だった女性と結婚、ここからの盾の家庭生活がよくくどく
ど述べられている。堯が癌にかかり、弁護士の盾に遺言で相談し
たいといって呼び出し、毒入りの酒を飲まし、自分もまた死ぬ。


 ・・・・・という、正直読むと気持ち悪いし、内容も反吐が出
そうだ。好みはあるだろうが。具体的な年月は書いていないが、
「五十年近い自意識の強さ」などという表現もあるから、三人
の関係はかなり長いようだ。でも何だか時間は停止しているかの
ようだし、思考の成長も見出しがたい。やはり民話の世界であり、
小説とは言いにくい。でも民話さえぶち壊す要素が次々出てくる。
当時の批評で「大型女流作家だから大型の失敗作だろう」という
ものがあったそうだ。ちょっとこの雰囲気にはついていけない。

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