ボーヴォワール『レ・マンダラン』、彼女が最も愛着があるという作品

ボーヴォワールが70歳のとき、ル・モンド紙のインタビュー
ヲ受けた、その一部、実は以前のブログ記事で載せたもの。
ル:あなたにとって社会主義とは理想のユートピアなんです
か?
Bov: そのとおりです
ル:今、書かれているものは?
BOv:作品の映画化が今は気になってます。スウェーデンの
友人が『第二の性』と『老年』をあわせた映画化を考えて
います。
ル:あなたは、この映画が作品に忠実であってほしいですか?
Bov:そうですね、私は『レ・マンダラン』を作品化してほしい
です。
ル:今までいちばん大切な作品は?
Bov:『第二の性』は最も反響が大きかったです。私が好きなの
は『レ・マンダラン』です。
ということで「レ・マンダラン」への愛着はひとしおである。
でその「レ・マンダランt」とは?
時代は第二次大戦末期、霧台はパリで洗う。主人公的人物で
アンリ、小説家である。また進歩的新聞の経営者でもある。ま
た主要人物、デュプロイユ、・・・アンリの先輩で文学者、進
歩的な政治運動の指導者である。
やっとドイツ軍から解放され、二人とも希望に満ちて新しい
生活を送っている。アンリは楽天的な小説を計画し、自分の
経営の新聞を進歩派の自由で自在な発言の場にしたいと思って
イタ。デュプロイユは共産党と協力しながら、同時に共産党の
悪い点は批判もして、政治運動を拡大しようと考えていた。そ
ういう共同戦線は戦時下のレジスタンスで成功したのだから、
これからも可能であると思いこんでいた。
しかし情勢は二人の主アク通りには進まない。共通の敵のド
イツが消え去ったことで、共同戦線など非現実的な夢物語とな
ってしまたのだ。戦後は今度はすぐに米ソ対立が現れ、進歩的
知識人たちを悩ませる、
他方では戦争の傷がなお癒えない多くの人々もいる。デュプ
ロイユの娘はナチスに恋人を殺害され、絶望から抜け出せない。
彼女はどんな男とでも寝る。アンリとも寝る。それでも、別に
彼女が快楽を得ているわけではない。また別の男は戦後、ドイ
ツに協力した者たちを暗殺してさまよっている。この、いわば
冒険に彼は刺激と生きがいを求めているのだ。そうかと思うと、
アンリの新しい恋人はナチス占領下でドイツ軍人の愛人であっ
たという。
戦争が終わってもさまざまな癒やしのない混乱が続いている。
彼らはその不条理な人生を、また厳しい対立の政治状況をどう
生きればいいのか、どこに生きがいと希望を見つければいいの
か、この作品のテーマである。
マンダランとは中国の昔の役人のことだそうだが、ここでは
有名文化人ていどの意味だという。曼荼羅とは無関係なようだ。
アンリはカミュを、デュプロイユはサルトルをモデルにして
いるといわれ、発表直後からフランスでは話題になったという。
さりとてそのような登場の文化人も政治的立場で色分けされ
てはいるが、別にその精神に立ち入っての表現は乏しい。人間
の個性があまり探究されていない。だが女性を描くとなると、
ボーヴォワールはセックスを中心としていろんなタイプの女性
をかなり細かく書いている。女性だから女性を描くのに巧み、
とわりきっていいのかどうか、でも政治とセックスで人間を書
き分けるというスタンスはその後も一貫している特徴である。
政治好き、セックス好きなボーヴォワールである。
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