戦時下における日本の文学者の姿勢、大半は熱狂的に戦争協力した
とにかく日本の言論、出版メディア、放送メディアは15年
戦争では徹底した戦争熱烈支持、というより超好戦的の極み
だった。それは現在に名の残る著名な新聞、雑種、出版社など
基本的にすべてである。今になって、いかに平和主義を説いて
もその記録は残っている。存立のためにやむなく、というのか
もしれないが、しかし現在も変わらぬ、ただただ100%プロパ
ガンダの宣伝機関となるのみである。
そこで文学者、となると非戦論などとける状況でもなし、
戦争に賛同できない、風潮に乗れない文学者、例えば永井荷風、
船橋聖一もむろんいたが、熱烈賛同が圧倒的だった。報道班員
で戦地に駆り出された文学者も非常に多い。プロレタリア文学
者で特高などに逮捕されたものも、ほぼ大半転向し、戦争協力
に邁進した。太宰治のキャラクターはむろん、戦争協力など、
まずやらなかった。
代表的な戦争協力といえば文壇の大御所という菊池寛、
また高村光太郎だろうが、戦前は神様扱いだった志賀直哉も
例外ではない。「シンガポール陥落」という直哉の文章、こ
れは志賀直哉嫌いの太宰治に戦後、罵倒された。志賀直哉は
小林多喜二の理解者として知られているが、
「日米会談で遠い所を飛行機で急行した来栖大使の到着を
待たず、大統領が七面鳥を喰いに田舎に出かけるという記事
を読み、その無礼に業を煮やしたのはついこの間のことだ。
日米戦わば一時間以内に宣戦を布告するだろうというチャー
チルの威嚇的宣言に腹を立てたのもつい此間だ。それが僅か
の間に今日の有様になった。世界で一人でも此通りに予言し
た者があったろうか。人智を超えた歴史の急展開は実に古今
未曽有の事である」
これだけなら事実を述べたようなものだろうが、この後
「日本軍が精神的に、又技術的にざん然勝れていることは、
開戦以来日本人も驚いている」、「一億一心は期せずして実
現した。今の日本に親英米という思想はあり得ない」「謹ん
で英霊に額づく」
まあ、あの情勢では仕方ないと思える。現在のアメリカの
子分のような英米への阿諛追従の属国的態度よりはいい?と
も思えるが、あの日本の超軍国主義の暴走、うちでは超弾圧
がよかろうはずはない。
白樺派でも武者小路実篤などは志賀の比類ではなく、熱狂
だ。あのトルストイ流の平和主義などかなぐり捨てて、開戦
当初、相次ぐ勝利の報道にどれほど感激し、敵愾心をもやし
たか、「大東亜戦争私観」に顕著だ。
「大東亜戦争が始まって以来、我等は日本を見直し、日本
の現代を賛美したい気持ちがしきりにしてくる。実にいい時
代に生まれたと思う。聖代といってよい」
「勝利はよき哉
勝利がこんなによきものということは
今初めて知った
実に痛快
あの傲慢な英米
日本人を自分たち以下の人間と思いこんでいる彼等
いくら理屈を言っても
豪然と構えていた彼等
遂に実力の前には頭を下げないわけにはゆかなかった」
「米英は負ける理由があって負けているのだ。イツまで
待っても負けるものは負ける。生まれ帰って来ないと、彼等
は勝てない。『馬鹿は死ななきゃ直らない』とおうが、馬鹿
は死んでもなおらない」
有島武郎の弟、里見弴も輪をかけていた。
ハワイ攻撃で気持ちが急速に明るくなったと長編「十年」
で述べている。
永井荷風はあのペースだがなら谷崎潤一郎はどうか、
ラジオ朗読用に執筆されたもの
「私は、今や無敵皇軍がシンガポールを陥れたという快挙を
耳にして先ず、何よりも感じるのは、我が日本帝国の成長と云
うことである」
小泉信三「聯合艦隊がいま何処にあるのか知らないが、その
方へ足を向けて寝られないという思いである」
堀内敬三「わたしたちの空想さえ及ばなかった偉勲を開戦
劈頭に奏された皇軍になんと感謝していいのか」
志賀直哉「天岩戸開く」
吉川英治「もの洗う水しの女妻どもも涙して聞け、刻々の
ラヂオ」
ただ見抜いていた人物がいたのは事実
網野菊によって明らかにされた終戦時の首相、鈴木貫太郎の
言葉だ、貫太郎の長男の妻と網野菊は日本女子大の同窓だった。
「父がね、日本はこの戦争に勝っても負けても三等国になり
下がるって、うちでよく云うんです」
それを網野菊がすぐさま志賀直哉に伝えたら、直哉は
「戦況がいいときなのに、異様に感じた」
戦後、戦争協力で追放された菊池寛は際立っていた
日本の文学、菊池寛など」中央公論、解説で伊藤整は「その
追放は不当だった、あの戦時下で明確に戦争反対は示せなかった
が、菊池寛が理性的に行動していかことはよく承知しyている」
だが実際は散々である。
開戦一周年の軍人との対談
菊池「大東亜戦争が始まって早くも一周年ですな。開戦以来、
陸海軍の赫々たる戦果には国民等しく感謝と感激の念を持って
おりますが、陸海軍でこれほどの戦果をはじめに考えておられ
たでしょうか。陸軍でも今の半分くらいではと」
谷萩大佐「そうですね、今の半分程度かと」
伊藤整の戦時下の日記
「特攻隊を送り出す整備兵の感涙、世界でもっとも美しく戦っ
ているのは日本である。あの特攻隊の美しさ、さもあろう、さも
あろう・・・・・」
火野葦平のように報道班員で麦と兵隊、など「兵隊三部作」で
文名を高めた作家もいる、それが戦後の失墜につながった。
サンデー毎日、対米開戦直後の犬がイノシシを襲う表紙
「サンデー毎日」の巻頭の宣言
謹んで按ずるに、冒頭「天佑を保有し、万世一系の皇祚を
践mうぇう大日本帝国天皇」を拝読し奉るは感激の限りであ
る。我が国は天照大神の神勅によって、天祚の御子孫が万世
一系連綿として君臨せられるので、かしこくも天皇陛下は天
佑を保有しおいでになられる。この尊厳無比なる国体につい
て自覚を抱くことは、我が国民にとって最も大切なことであ
る。いまその萬系の尊位にいます陛下が全国民を「汝有衆」
と呼ばせられ、「忠誠勇武」と称し、給う承るなんという
有難さであろう。
次の段において聖上には米英ニ国に対し、戦いを宣せられ、
陸海軍の将兵は全力を奮って敵を破り、・・・・・
要は既成メディアはその次代のプロパガンダの洗脳の道具
という点で今も昔も変わりはない、脱炭素、新型コロナ、すべ
でこの流れである。
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