日本の核武装論の横行、そのバリエーションとしての広島、長崎の原爆地上爆破説
思うに最近、とみに若い人の間でナショナリズムが高揚し
ている。若者はナショナリズムに猪突猛進しやすいが、さら
に左翼、リベラリズムは悪だと、・・・・・誰かに教えられ
たのかどうか、そこから左翼的教養が欠落、別に政治的スタ
ンスは自由でも、歴史上の知識を身に着けるべきだと思うが。
そのような若者の間、実は若者ばかりではないのだが、日
本も核装備すべき、それが最も安上がりで効率的な防衛力と
なる、実は全く誤解なのだがそういう趣旨の本も刊行され、
ある程度売れているようだ。私は日本の核装備論のバリエー
ションとして「広島、長崎原爆の地上爆破説」がまことしや
かに流れている、ネットがメインなのだが、まことしやかに
説かれている、ことが挙げられる。
じゃ、日本で戦時下、核兵器が開発?湯川秀樹などが取り
沙汰されているが、現実、日本も核兵器開発計画があり、東大
の仁科芳雄博士を中心としたグループが軍部の委託を受けて、
開発を行ったが、現実に乗り越える難点が多すぎ、仁科博士も
「アメリカといえども今大戦での実用化は不可能」と開発を断
念した。ナチスドイツも核兵器開発を行っていた。その開発研
究の本拠をノルウェーにおいていたが、それを察知したイギリ
ス特殊部隊によって破壊され、核兵器開発は不可能となった。
ナチスはICBMの最初の姿のV2を実用化しただけに、もし核兵器
が開発されていたら、大戦の様相を一変させていたと思われ
るが、ナチスドイツも核兵器の実用化はまず不可能に近かった
と思われる。
広島に原爆が投下され、仁科博士もただちに軍用機で広島に
飛んだが、空中からの光景で原爆と断定した。
Enola Gayから見た広島原爆投下
古来、日本の核武装論は保守論客などを中心に何度も主張さ
れている。またブームとさえいる。(戦時下でも日本は原爆を
実用化していた、・・・・・地上爆破説」、・・・しかし実際、
荒唐無稽というしかない。つまるところ全てはナショナリズム
の発露と思われる。
日本の核武装?もちろん全くのあり得ない机上の空論という
記事が多い。日本は原発から原爆に利用できるプルトニウムを
多量、保有できている。原発はそういう意味で戦略施設なのだ
が、さりとて日本が核武装できるかといえば、全くの別問題で
ある。
まず日本は日米合同委員会、地位協定、日米安保など事実上、
防衛の、軍事的防衛はアメリカの掌の上にある。関東の空も、
アメリカ軍の管轄下に今なおある。ドイツと同じく、日本も防衛
衛のアメリカからの完全自立は不可能なのである。
アメリカが日本に核武装を認めるなら話は別だがNPT体制、さ
らに日米原子力協定から日本の核武装は絶対に認められない構造
なのである。無論、なら日本がアメリカと絶縁、完全自立すれば
可能かと云えば日本の核武装で原発などへのウラン供給は即座に
停止され、国際的に多くのペナルティが課される。プルトニウム
が出来ます、と言って原発のウランは外国からの供給なのである。
原爆は理屈は子供でもわかるし、「日本の核技術なら容易」と
いうコメントは多い、そうであっても、では核兵器を製造、実用
化となると核爆発の場所、また核兵器の所在を完全に秘密とする
隠蔽場所、さらに核兵器はそれ自体だけでは「国内での地上爆破」
くらいしかできない、なにいより「移動手段」がないと無意味であ
る。それにはICBMのロケット技術、さらに超音速戦略爆撃機、また
原潜などが必要だが、怖ろしい経費がかかり、、不可能である。
もしアメリカが日本の核武装を認めて原爆の核爆発実験場所、ま
た秘匿隠蔽の場所を提供してくれたら可能かもしれないが、政治的
にあり得ないし、NPT体制からもアメリカだけの承認では不可能であ
る。
「核兵器を持てば安上がり」通常兵器は手抜きしたらいい、できる
、というのは全くの誤りである。双方、核兵器を持てば核は使えない。
だから勝負は通常兵器と成るから同じことである。中国、北朝鮮を念
頭にあると思われるが、「日本も原爆を保有した」は抑止力にはなり
得るが、通常戦力の負担軽減には全くつながらない。
それ以前に日米安保体制、日米合同委員会、日米原子力協定、NPT
体制などから日本の核武装は不可能、全くのナショナリストの幻想で
しかなく、机上の空論との認識は正しい。
ただ世相、人心の動向の参考にはなる核武装論である。
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