ロートレック、ジョアイヤン『美食三昧』座右宝刊行会、ロートレックの美食趣味、悪食趣味を描く、フランス料理のユニークな入門書?
たいした美本である。なお新品が入手可能だ。「赤い風車」
の印象派の画家、トゥールーズ=ロートレックは小柄ながら、
大変な美食家、また美食は悪食に通じるもので、悪食家でもあ
った。自分自身で調理することを好んだ、という。ロートレッ
クの親友、ジョアイヤンがロートレックの死後、伝記を書き、
その美術館を建て、それでなお満足せず、二人して見つけた
いろんな料理を書き記し、それを本とした。その結果の本は、
ロートレックによる豊富な挿絵、カット入りの料理書となっ
ている。その翻訳が『美食三昧』である。日本訳のこの本が
出たのは1974年である。・・・・・・とまあ、これだけ書け
ば紹介自体は十分で、もう本書の部分の転載である。この料
理の記述だ、「味わうことを知っているのと同じように、調
理することも知っていた」、まあ奇書だろうか。
ウナギの網焼き
「ソンム川の急流で取れた、二本指以下のウナギを用意する。
皮をはぎ、はらわたを取り出して、三つに切る。横腹を切り開
き、パン粉をまぶし、炭火で網焼きとする、途中で塩を振る。
練辛子入りのブラウン・ソースまたは熟した酢、練辛子、刻ん
だパセリなどを加えたソース・ピカントンを添えて供する」
モルモットのシチュー「9月のある日の出の頃、鼻を風にさ
らして腹を上にして太陽を浴びているモルモットを数匹、殺し、
皮をはぎ、脂肪の塊を丁寧にとって、別に保存しているおく。
モルモットを数個に切り刻み、兎の煮込みと同じように調理する」
ウズラの灰焼き「9月の終わりか10月のはじめ、よく脂のの
ったウズラを殺し、羽をむしり、内臓を取り出す。適当に塩、
コショウをふりかけ、たっっぷりバターを塗った葡萄の葉で一
羽ずつ包んで紐で縛っておく。炉床の灰に埋める。焼きあがっ
たら、熱い皿に盛って供する」
タコの丸揚げ「若いタコを一匹用意する、傷つけないように
注意して丁寧に洗う。頭のさきにニンニクを入れ、体を串刺し
にして足で頭を包むようにする。これを煮えたぎった油の中に
、ゆっくり全体が浸かるように入れる。タコの身は縮み、シャン
ピニオンのようになる。それから別の鍋にタコを入れて、油、ケ
イパー50g、薄切りにした黒オリーブ50g加え、ゆっくり火を通
す。塩コショウ、(これはオリーブが無塩のみ)振りかける。油が
煮詰まってケイパー、オリーブが溶けたら、このソースを濾して
タコにかける」
だがこの美食趣味、悪趣味的な方法はこれぞフランス料理の
コンセプトでは、と思わせる。あのロートレックがこういう調理
をやっている姿を想像すると面白い。
とまあ、いろんな奇妙な調理法が多々、だがこれぞフランス
料理のコンセプトではないかと、ユニークなフランス料理の、
「入門書」になり得る?かもしれないと思います。
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