井上ひさし『浅草鳥越あずま床』1985,浅草のいい年した少年探偵団の小説

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 私は東京の浅草に「鳥越」という地名の場所があることを
、実はずっと知らなかった。井上ひさしさんは東北の宮城県
のご出身だったと思う。上野は浅草?なのか、やはり東北人
には浅草は親しみを感じる場所なのだろう。。井上さんが、
浅草鳥越あたりの個性的な庶民を描いた作品である。

 正月にはハガキや手拭いを持って近所に年賀に歩き、桜が
咲けば花見に誘って歩き、珍しい食物が手に入ればわずかで
も、それを分配しに歩き、火事があれば触れて歩き、泥棒が
入れば助けを求め、叫んで歩く。うれしければ吹聴して歩き
、つらいことがあれば愚痴って歩く、という具合で近所との
付き合いで歩き回るのが浅草鳥越あたりの人の生きがい、楽
しみということらしい。それを具現化したような在住の六人
の老人を主人公として展開してゆく。いたって下町情緒に満
ちているユーモア小説だろう。

 この御老人たちは、床屋の主人、文房具屋の主人、銭湯の
主人、かもじ屋の主人、江戸千代紙屋の主人と北川歌麿にあ
やかった北川雲麿と名乗る絵師、というのか画伯、この六人
衆は幼馴染みで生粋の江戸っ子である。何かというと、床屋
の孝ちゃんの店先に集まって、いい年した少年探偵団のように
、共同行動を行う。
 
 例えば、NHKへの出演の話で町内会の宣伝のために奮闘し、
また彼らのマドンナというべきか、柳橋の芸者の小春が危う
く仙台の悪徳業者に騙されそうになるとこrを、皆で仙台に
乗り込んで救出する。と、あまた床屋の孝ちゃんの家に下宿
しているストリッパーが実は男とも知らず、全員が首ったけ
になったとか、カタール王国の王子と自称の宝石泥棒を捕ま
えたりする。

 いたってドタバタで、「ひょっこリひょうたん島」をも
髣髴とさせるものがある。やはり、このドタバタ劇こそ、井
上さんの持ち味、真骨頂かなと思わせてくれる。ユーモアを
解することが、そのドタバタを許容できる人でないと読むべ
きではないだろう。

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