シュトルム『北の海』角川文庫(「遅咲きの薔薇」にに収録)

市民的リアリズムと称されるテオドール・シュトルム、1817
~1888,基本的には法曹として生涯を送った。・・・で、『北
の海)かって古くは角川文庫で「遅咲きの薔薇」という作品と
同時に収録されていた。「シュトルム選集」にあるだろうか。
「北の海」は中編小説である。「遅咲きの薔薇」は短編であ
る。
「北の海」は後期のシュトルムの作品の特徴である厳しいリ
アリズムをよく示した作品とされる。刻苦の末に、船のオーナー
になった父のハンスは、ありったけの愛情を子供に注いだ。心
底、愛する息子が自分の大望を受け継いでくれ、さらに出世を
遂げてくれる、と信じていたのだ。
だが、心に自分自身の意思が芽生え、そのような愛情にも反
発を覚えるようになったハインツが、貧しい水夫の娘のヴィープ
に恋心を抱くようになったことを知った父親は激怒した。ハイン
ツは航海に出る前夜、月の夜に舟を漕ぎ出し、最初のキスととも
に、形見の銀メダルを首にかけてくれたヴィープの面影を胸に抱
いて出航する。
他方で待ちわびる両親を訪れず、挨拶人しない息子に父の怒り
はさらに激しくなる。あげく父親は非常の父は15年間で唯一の手
紙さえ、切手が貼ってないことを理由に開封もせず、送り返す。
根は善人で、また同時に頑固一徹な性格と抑えがたい野心のため、
血を分けた子供を二度までも惨めな運命に追いやってしまう。そ
のため、身をかきむしるような罪悪感と救いがたい悔恨と寂寥に
さいなまれる。
だが和解は、孤独な父が息子のかっての恋人ヴィープと父親が
、今は亡きハインツへの物静かな追憶を通して、しみじみと手を
とりあったときに、やっと訪れたのである。ヴィープとハインツ
を奈落に突き落とした老いたる父親、ハンスを許し、その手を
とりあって、、北の海の渚を歩むヴィープ、
やはりシュトルムは甘すぎる印象は受けるが、それがまた魅力
というしかない。「愛のいざない」角川も絶版だろうか。
この記事へのコメント