宝塚、懐かしの写真館(265)「忘れじの歌」大劇場、昭和13年1月


 オペレット「忘れじの歌」、物語は欧州大戦の直前より始
まる。英国のメンドラム公爵邸では、今夜、、多数の客を招い
て素晴らしい計画のもと、華麗な夜宴が開かれていた。それは
オペラ界のプリマドンナとして名声を欲しいままにしているメ
ルバ(草笛美子』が侯爵夫妻の宴会に招かれて特に出席すると
いうものであった。

 招待客たちはこの企てを夫人(園井恵子』の口から聞いて知
っていまさらのように、公爵(秋風多江子』の権勢を称えるの
であった。折も折、この宴に招かれていた人気画家のダルメン
(葦原邦子』が公爵夫人の肖像を描きたいと言い出したので、
夫人は喜びで有頂天になっていた。

 ダルメンは若くして美貌の芸術家であった。彼は今までも幾
人もの麗人の肖像画を描き続けてきた。それだけに一面放縦で
あり、女たらしの評もあった。だが彼の親友で公爵の主治医で
あるドクトル・ブラント(汐見洋子)は極力、それを否定して
いた。ブラントの言葉によると、ダルメンは立派な芸術家であ
り、スコットランドの田舎の別荘でただ一人、年老いた下男と
古いピアノとだけと生活しているというのだ。彼の絵の深さか
ら、魂が感じられるのは、この孤独を愛するところに起因して
いるという。

 その真摯な芸術家であるダルメンが、なぜ選りにもよって、
もはら初老というべき、夫人をモデルに選んだのであろうか。
ここで話は夫人の姪のジェイン、櫻緋紗子に向けられねばなら
ない。・・・・・・


 ★白井鐡造、帰朝後第二作、

 帰朝第一作でグランド・レヴュウを発表した白井鐡造は方向を変
えて傑作「アルルの女」をも凌ぐオペレットをものにした。「忘れ
じの歌」はけだし、懐かしの故郷に戻るようなものである。

 主な配役


 ダルメン:葦原邦子

 ジェイン:櫻 緋紗子

 ドクトル・ブラント:汐見洋子

 メルドラム公爵夫人:園井恵子

 キャサリン:大空ひろみ

 メルドラム公爵:秋風多江子

 ビリー:月影笙子

 ポリール・松島喜美子

 エリザベス:海原千里

 シモンズ:八千草露子

 マッケンジー:泉川美智子


  ジェイン:櫻 緋紗子

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  ダルメン」葦原邦子

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 マッケンジー:泉川美智子

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 エリザベス:海原千里、ポリール:松島喜美子

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 ダルメン:葦原邦子、ジェイン:櫻 緋紗子

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  メルドラム:秋風多江子、 公爵夫人:園井恵子

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