北畠八穂『あくたれ童子ポコ』文章自体は歯切れがいいが、全体として本当に読みにくいのはなぜ?
亭主の深田久弥に『あすならう』、『オロッコの娘』を
「提供」した、ある意味、天才作家の北畠八穂である。現在
もなお刊行されている『あくたれ童子ポコ』である。初版は
昭和29年くらいだろうか、かなり前である。
思う存分、暴れるポコというアダ名の子供の成長過程を描
いている、6歳から10歳だろうか。それを著者の出身地の津軽
の風物詩を背景に才気あふれる健筆であるが。
父親をなくし、祖母と石運びで働いている母に育てられてい
る、自然児ポコの生活ぶりは溌剌としているが不良の従兄が入
りこみ、さらに賑やかになる。アメワッパを買ってきてくれた
母親が雪崩の日から姿を消してしまう。ポコは雪崩で母は亡く
なったのかと思っている。従兄が祖母とポコのために人が変わ
ったように働きだして、仲間の四郎家族と、人の住んでいない
ザル浜へ新たな生活を求めて移住、ポコの先生や同級生に、子
犬を餞別でもらって見送られる。
新しいむらづくりの生活の中から、ポコは四郎おじさんの二
人の女の子を連れて危ない道を歩いて分教場に通う。分校の先
生も児童も、ポコのアクラ江の裏の正義感を見てくれず、悪童
として煙たがれる。死んだと思った実母は生きていて、拝み屋
の婆さんの家来のようになっていた。ポコは気づかない。山火
事やポコの詩の入選、などの出来事が絡んで泣き笑いが繰り広
げられる。
雪崩にあった黒人を助けたため家に戻れなかった母親、その
哀感、なにか哀れさが全編を貫く、ポコの悪童ぶりと正義感が
行き来と描かれる、確かに抒情詩であるが、・・・・東北の
「つらさ」が底に流れている。
しかし、個々の文章は歯切れがいい、でも、全体としては
全く読みにくい、津軽方言もあるだろう、だが特異な感覚的表
現と文の相互のつながりに飛躍があって、読むのは簡単ではな
い。子供も読者に、と狙っていたのかどうか、中学生以上が、
最低条件だと思うが、忍耐がないと読みこなせない。ちょっと
児童文学と思えば異質な読みにくさだ。
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