香月弘美さん、宝塚舞台事故死の再考:衣装より狭いセリ、あまりにひどい宝塚歌劇団の安全軽視

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 あれは、私が60歳の誕生日の少し前、に執筆、旧「つぶやき
館」にアップした「香月弘美さん、宝塚舞台での事故死、白い
旅立ち」、・・・・・・あれから10年近くが経過した。執筆の
動機は全く偶然にYou Tubeで見た動画にその事故死が取り上げ
られていたが、全く興味本位のグロ的好奇心だけのもので、香
月弘美さんについてのネット記事のほとんどが好奇心に基づく
もので、私なりにその悲哀が痛切に感じられたからである。

 執筆から10年近く経過した、あらためて、もう一度考えてみ
たい。

 事故の発生は昭和33年、1958年4月1日、午後6時半過ぎ、同じ
日、同じ時刻に東京宝塚劇場では星組による「花詩集」が華々し
く開演したていた。宝塚大劇場で花組公演「春の踊り」花の中の
子どもたち、第12場、

 ハート8「王様、私たちはお互いに心から愛し合っております」

 ハート7「王様、お願いでございます、愛し合っている二人を
結婚させて下さいませ」

 クイン「この国に愛などという言葉はない。けがらわしい。ボ
タンじゃ!」

 キング「ボタンじゃ!」

 ー音楽とともに、二人は地下に消えてゆく。

 ハート7が香月弘美さん、ハート8が松島三那子さん、くしく
も藤沢市の学校の同級生だった。

 舞台最前面のセリに乗って降りる途中で、香月さんの大きく
裾が広がったスカートがセリのシャフトに巻き込まれてしまっ
た。ここでスカートをふくらませるためにスチールベルトが
香月さんの胴に食い込んでシャフトのt落下のととも、香月さん
の細い胴がスチールベルトで真っ二つに切断されてしまった、
ということである。

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 宝塚歌劇団側は「本人の不注意」と言い張り、他方、警察は
業務上過失致死に相当するのではないかとも考えた。

 そのセリついて前のブログ記事にも載せたように

 春日野八千代さん「あのセリはたしかに危険です。大きめの
衣装で乗るときは本当にヒヤヒヤで、そのため舞台も身が入り
ませんでした」


 松島三那子さんは同じセリに乗っていたのである。

 「止めてぇという小笠原さん(香月さんの本名)の悲痛すぎる
叫び声がいまでも生々しく耳底にこびりついて・・・・」

 4月5日、母親に付きそ合われて記者会見に臨んだ松島さん、
黒一色の装い、黒いチュールをかぶった喪服のような衣服、
顔をこわばらせ、必死の形相で質問に答えた。

 その記者会見で松島三那子さんが語ったこと

 ①香月さんの衣装がこのセリでは危険だということは、演出
  者も事前に十分承知していたはずだ。

 ②本来は日夏夕里さん(退団後、小山田宗徳と結婚)はこのセリ
に乗るときは極度に用心していた。香月さんは代役だった。

 ③奈落には人がいたように思うが、はっきりとは断言できな
  い。

 ④非常スイッチの在り場所はしらなかった。

 ⑤止めてぇ!という香月さんの声を耳にして松島さん自身も
  必死に叫んだが、それに応える人影は見られなかった。
  やむなく彼女は助けを求め楽屋まで駆け上がった。

 ⑥松島さんは14場に出る早変わりのためセリが完全に降りき
 らないうちに、つまりは1mほど残して飛び降りないと間に合
 わなかった。それほどプログラムは極度に詰められていた。

 
 ここで読売などは「奈落でスイッチ操作をしている係員は急い
で止めた、係員に香月さんのからファが倒れてきた、だが上半身
だけだった」

 この説は「香月さん、白い旅立ち」記事でも引用しているが、
 奈落は無人で松島さんが助けを求めて楽屋に駆け上がった、
 との毎日報道、それが記者会見の内容なのだから、信じるし
 かないがどちらが正しいのだろう?

 ただし根本原因は

 ★セリが1m20cm、3mの長方形、これは狭い!香月さんの
着けていたパラシュート・ドレスは直径1m30cm、セリの幅より
広いのだ。これで事故が起きないほうが不思議だろう。


 しかもこの役は本来、セリは使わず扉の影に隠れるという演出
であった。舞台稽古の日になって急遽、セリを使うことになった
というのだ、誰の判断だったのか?これが直接の原因というほか
ない。実はもっと狭いセリを使おうとしたが、いかにも狭すぎる
ので一号セリに決まったというのだ。

 香月さんを切断したセリは地上60cmで停止した。舞台上から
2m20cmくらいで非常ボタンが押されたようだ。歌劇団の言い分
は「セリを使うときには必ず下に人を付ける」というが、2m20cm
も下がる間、ポカンと見ていたのか?悲鳴を聞いてとっさの行動が
なぜ取れなかった、というのだ。

 かくしてセリは3mほどあるが、役mセリが降りた付近でシャフト
にパラシュートドレスが巻き込み、裾を広げる三本のスチールベル
トが香月さんの胴を締め上げ、腰の部分で切断した。スチールベル
トは幅2cm、厚み1mmのスチール製、鋭いものだった。奈落にい
た祐野繁造氏が両手を広げて抱きとめたら、すでに下半身はなく、
ただ真っ赤に染まったドレスに肉塊が挟まっていたという。

 異常なセリの狭さにセリの幅以上の幅のパラシュートドレス、
おまけに二人乗っている。これで事故が起きないのが不思議で
、だから扉の影に隠れる予定が、急遽、セリの使用に変更。これが
香月さんの命を奪った。

 また無謀なスケデュール、非常ボタンスイッチの場所を生徒には
教えていなかったという杜撰さ、である。

 香月さんはセリを踏んで三回はクリアーしたが四回目に死が待って
いた。

 本来の予定の日夏夕里さん

 「この場では本当にセリに全神経でした。私は本当に怖くてたま
らず、自分の乗る位置を決めていました。この危険さを弘恵ちゃん
に教えていたら」と悲歎にくれていた。


 梅田宝塚歌劇団長・事故当時は東京出張中で2日後に帰阪した
が、報道陣に渋い表情で

 「死人にゃ悪いが本人の不注意だろ」

 羽山芸能課長、娘さんたちを預かっている責任者だ

 阪急ストのストで改札に駆り出されていた、記者にこうつぶやいた
、という

 「香月君の不注意さ、ま、舞台監督の吉富とも話し合って結論を

出すよ」

 歌劇団幹部のこれらの安全軽視、生徒との死など屁でもないという
姿勢こそ、憎むべきであり、それこそが命を奪った根本といえるだろ
う。

 多くの投書があった

 「香月さんを殺したのは阪急の経営機構ですよ、天津乙女さん
だったら付け人も多いし、あんな事故は起きてない」

 「宝塚では入っても歌劇団への賄賂、裏金がないと生徒の
待遇は悪いとされてます。十分金を出した生徒には劇団は親切
で、出さない生徒は半泣きですよ」

 「この事故の前、東京宝塚でも子供三人が焼死してます、
その時も演出も高木史朗ですよ、今回もね、無理な演出を
強要する男です」

 死と隣り合わせな危険な舞台で無理な演出を強要される生徒
たち、それを事故があれば「本人の不注意だ」で冷たく突きは
なす劇団側、・・・・・・・起こるべきして起こった香月さん
の事故であったというほかない。


  合掌  香月弘美さま


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