尾崎紅葉『金色夜叉』下敷き、アメリカ文学「Weaker than a Woman」を読む

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 割と新しいと云ってよい本『盗作の文学式』栗原裕一郎だ
が、そのかなり最初に近い部分にこうある

 最近も例えば、尾崎紅葉『金色夜叉』が19世紀末から20世
紀にかけて英米両国で大ベストセラー作家だったバーサー・
M・クレイの『女より弱き者』を下敷きに用いていたことが
堀桂子(東海大)の研究で明らかになった。(堀による翻訳
書あり)日本近代文学の代表的作品の真相が実に100年以上も
経て明らかになった。・・・・・バーサー・M・クレイの作品
は流行作家の常で大部分が散逸していたが、堀がクレイを所蔵
の英米の図書館をくまなく歩き、千冊以上に目を通し、ようや
くアメリカのある大学図書館の特別書庫で『女より弱気き者」
を探し当てたという。


 ・・・・・なのだが、最初から『女より弱き者』が「金色夜
叉」の下敷きと分かっていたら探すのは容易だが、そうではな
かったのだから、大変な苦労だったと思う。

 ただし英語の原初『Weakwer than a Woman』はずっと前から
ペーパーバック版などで刊行されているはずずだ。私は購入した
のはコピー版の書籍であった。正式なエディションではなく、
CLASSICAK REPRINT SERIESデ、正式にはForgotten books.comか
らの海賊版めいている?

 著者はシャーロット・マリー・ブレーム、一人となっている。
バーサ・M・クレイとの共著が通例である。わりと長い作品で
ある。当該部分?を引用すると

 "I cannnot marry you" she replied quickly

" Why not Violet ? Tell me why"

"Because I am engaged tomarry Felix Lonsdale"

"Is that all? What on earth does that matter ?He ought to be
ashamed of himself to presume to asik such a girl as you to
marry him ,he must be mad to think you would"

"He loves me!"she said quietly

"So do I,so do many others.You must not marry him,Violet,
he has no mmoney,no influencem no position, his father is
under a cloud which must darken th e son's futurer.
You cannnot marry him ,it would me madness"
"I am engaged to him"she replied

許嫁と結婚するな、やつは金持もないし、地位もない、と
片方の男が女にしきりに、あいつと結婚数rな、と説得の様子
である。

 あの明治時代、このさほど読みにくくもない、というのか
非常にわかりやすい英文を読んで尾崎紅葉は大いに触発され
た、事実上の下敷きと云うが、一種の翻案といっていいだろ
うか。

 実は遥か前から、尾崎紅葉はある米文学の作品にヒントを
得て金色夜叉を書いたというのは定説であった、その作品の
特定が長く出来なかったわけである。東京堂の日本文学鑑賞
辞典(近代編)でも

 明治29年の夏、尾崎紅葉は米国のある小説を読み、その主
人公が金のため婚約者に裏切られるという筋からヒントを得て、
(金色夜叉)を構想した、という。当時、親友の巖谷小波の
失恋があり、小波が貫一、その恋人が川田綾子が宮のモデルと
もいわれている。鴎外も称賛しているが、貫一を高利貸しに、
追いやったと言うのは当時の社会の風潮をよく示している。
これは尾崎紅葉の創作といわねばならない、・・・・

 とある。

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