ハリー・クレッシング『料理人』、料理をネタにした「赤死病の仮面」?
確かに変わった趣向、コンセプトの小説ではある。だが。
このパターンはある意味、ありふれていると思える。どこ
からか得体の知れない人間がやってくる」、それが内部に
入り込み、徐々にすべてを崩壊させ、死滅に追い込む。端
的な例はポーの赤死病の仮面である、「赤死病」が「料理
人」The Cockの「料理」に変わったと思えばいい、追い込
みのプロセスが生活に密着したやり方、ということだろう。
世評が云うほど、変わった小説とは思わない。1970年に映
画化され、Something for Everyone

ある日のこと、一人の男が自転車でシティからコブの街
にやってきた。途中、ある丘の上にひっそり佇む、そこか
らまるでお城のような幻想的な、ゴシック風の石造の建物
に目をやる。人の住んでいる気配はないのに、手入れが行
き届いている。男のはこの建物、「プロミセンス城」に興
味を抱いた。
男は2mはあろうあkという大男だった、その上、死人
のように痩せていた。顔つきは陰険で鷹のようだった、目
は鋭い、くぼんだ眼窩だ。鼻は嘴に似ている。防止からは
みだした黒い縮れた毛は背筋からカラーまで伸びている。
来ているものは上下、黒尽くめ、異様な外見だった。
この男の名前はコンラッドという、コブ町の名門の資産
家、ヒル家がシティの新聞に出した「料理人求む」の広告
をみてやってきたのだ。コンラッドの持参の推薦状に載っ
ているシティの名士たちの名前を見てヒル家の当主、ベン
ジャミンは即座に採用を決めた。翌朝の朝食からコンラッ
ドはヒル家の人々の舌を魅了してしまう。日を追ってコン
ラッドの活躍はめざましく、ヒル家で重要な位置を占める。
わざわざ、一番、貪欲な肉屋から叩いて肉を買う、あっと
いう間にヒル家の執事を追い出し、家政婦も追い出す、ヒ
ル家を仕切っていく。
まるで魔法のように巧妙なコンラッドの料理に魅せられ。
ヒル家の息子ハロルド、夫人、投手のベンジャミンまでが
料理以外に興味を示さなくなる、コンラッドはヒル家を
支配していく。
ヒル家と並ぶ名門のヴェイル家でも腕利きのコックがい
た。ブロックという。だがヒル家に呼ばれたヴェイル家の
人はコンラッドの料理に驚き、ブロックの料理に愛想を尽
かす、激怒のブロックはコンラッドと対決する。
だが力勝負、格闘でも圧倒的だ、ブロックの手に包丁を
つきたて、テーブルに釘付けという残忍な方法で駆逐する。
コンラッドの悪魔性は顕著となる。肥満に悩むヴェイル家
の娘、ダフネを食事療法で痩せさせるが、これは娘の命を
縮める狙いだった。ダフネはハロルドの婚約者だ、結ばれ
たらこの城は二人のものとなるはずだった、これはコブ家
の遺言でヒル、」ヴェイル両家に残されていた。他方で
ヒル家の令嬢の絵スターを肥満させ、男から相手にされな
いようにしてわがものとする。画策の極みでついにプロネ
ンス城はコンラッドのものとなった。ヴァイル家はすべて
死に絶え、ハロルドがコックに、夫人は家政婦に、ベンジャ
ミンは執事に落ちぶれた。城では日夜、酒宴、コンラッドも
エスターも豚のように肥満する。富は食いつぶされようとし
いた。・・・・・
これを非常に変わった小説とみるのかどうか、最初にも
述べた通り、このパターンはよくある、映画ならなおさら
だ。後味は悪い、「さらば美しき人」というシャーロット・
ランプリング主演の映画がにていると気づいた、
ハーリー・クレッシングは本名、ハリー・アダム・ルー
バーという。1928~1990,経済学者、弁護士だったという。
でもこのパターンならもっとうまくかけそうな気もするが、
ま、日本語じゃ仕方がないかな。
Harry Kressing

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