『アスピリン・エイジ』イザベル・レイトン(早川書房)1919~1941までのアメリカ社会史,狂乱'20年代、不安の'30年代

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 1951年に岩波書店から抄訳で出ていると思うが、1971年に
早川書房から出たのは全訳である。それは単行本だったが、
その後、早川文庫で上中下三冊になって出ている。1919年か
ら1941年まで、第一次大戦終了、ヴェルサイユ条約から日本
の真珠湾攻撃で一気にアメリカも第二次大戦に参戦、その間の
アメリカ社会史でアメリカを規定すると言って過言でない、重
要な時代だ。日本から見たら、この本にはないが、激しい日本
人排斥法、日米関係は悪化した。第一次大戦終了後、早い時期
に日米戦の伏線は敷かれた。

 「狂乱の20年代」F・スコット・フィッツジェラルドの「The
Great Gatby」映画化されて「華麗なるギャッツビー」だったが、
えも言われぬ禁酒法の混乱、1920年から1933年まで施行された、
「アンタッチャブル」の時代だ、狂乱の20年代から不安の30年代、
ついには日米開戦、ドイツもアメリカに宣戦布告、にいたるまで
アメリカの実際の社会はどうだったのか、なぜ?である。アメリ
カ人の狂気の頭痛を癒やすための必死に求めて与えられたのは、
たかがアスピリンくらいだった。だから「アスピリン・エイジ」、
アンタッチャブルの時代、世界をオール子役キャストで描いた
映画、ダウンタウン物語も雰囲気をよく表す。

 この本には、20を超える程度の事件、物語が述べられている。
それらは普通の歴史の本には記載されていないと思う。

 1938年、「火星人の襲来した夜」これは実はよく知られている
は当時の人気俳優、オーソン・ウェルズがラジオドラマで新手法
を駆使して行い、本当に火星人が襲来したという不安を与えてし
またという話、この短絡的なパニック心理がナチスのチェコなど
への進軍、進駐の最中に行われたということ著者は指摘している。
1938年の秋の国際情勢を述べ、このような些末な事件から時代を
見るというスタンスは一貫しているようだ。

 ルイジアナ州に突如現れたファシストを描く「アメリカの独裁
者とヒューイ・ロング、ビルの突端において自殺を宣言した青年
を巡る「出張りの上の男」

 著者もあの時代のアメリカを不思議な魔法の国だった、と慨嘆
sる。次々と起こる奇怪な社会的事件、頭痛に悩むアメリカ人
「アスピリン・エイジ」の象徴だろう。

 興味深く面白い本だが、決して過去の話ではない。これからも
とんでもない愚民化、思い込みによる異常現象は起こる、はずだ。
現実がそうだ。

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