阿川弘之『ぽんこつ』1960,ちょっと喜劇としては凡庸で古風かも、吉本喜劇レベルか


 結論を言えば自動車の解体業の青年と女子大生の恋愛譚
にしてハッピーエンドである。阿川さんもこんな作品を書
いていた、まあ、遠藤周作さんとも親友!だし、その顰み
になっらのかどうか、・・・・・まだ日本人の車事情とい
えばミゼットレベルで「アメリカでは工員でも自家用車で
通勤している」という記事が驚き的であった頃だ、

 中古の車をやっと手に入れてゴキゲンな若い兄と妹の会
話からこの作品は始まる。兄は時計メーカーの技師、これ
がまた時代を感じさせる。機械ものだった時計、だから兄
は機械いじりが好きだった。「機械っていいよな、全く犬
や馬より忠実で、動物みたいに厄介な感情は保たないし、
だから好きさ、ガソリンさえ食わせていたら、走れ、と云
ったらすぐに走り出す。止まれ、と言えばすぐに止まる。
目を輝かせ、あいつはこうこうと、二つの目を輝かし始め
るんだ」

 なんともこれも時代を感じさせる言葉である。

 そうしたら車に感激していた妹が「は100キロ出せ、人を
轢き殺し、兄貴は刑務所に行くんだ」

 中古車を持ったくらいで、と思ってはいけない。時代で
ある。

 これが発端というか最初である。「可愛い非情な生き物」
だという車、こんな感情を持った時代があったんだ。

 ところが兄の方は最初のスピードテストで100キロを出し
てみようとして、途端に車を橋の欄干にぶつけて死んでしま
う。いまなら、たった100キロでも当時としては、すごい速
度と思われていたんだ。この全損近い兄の車を解体屋で処分
してもらおうと妹は「ぽんこつ屋」にでかける。そこで働い
ている一人の青年と知り合う。以後、この小説はこの二人の
恋愛の進展で進んでいく。

 ぽんこつ屋で働く青年は空襲で両親を失っていた。でも、い
たって呑気な楽天家であり、そそっかしく、仕事は腕がいいと
される。生活力もある。それが思いもよらず魅力的な女子大生
と知り合えてツキが回ってきたのだろうか、店主の命令で買っ
た馬券が大当たり、一挙に大金が転がり込んだ。

 一方、女子大生は卒論に悩み、なるべくシンプルにと8ミリ
カメラとテープレコーダーでまとめる算段をする。テーマは
「交通問題」そのテーマで駆け回るうちに、8ミリを利用し、
「動く見合い写真」のバイトをやりだし、しっかり稼ぐ。あの
青年とも親しさを増す。面白いキャラクターみたいだが、いま
いち活気があるとは云い難い。

 やがて女子大生は両親の反対を押し切って青年と結ばれる。
青年は「動く見合い写真」で頑固な叔母を説得する。めでたく
結婚という、何だか吉本喜劇みたいな話である。中身がシンプ
ルすぎる。

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