シュールバーグ『夢破られて』、小説版「サンセット大通り」、作家のフィッツジェラルドがモデル
アメリカでも破滅型の作家は少なくない。ポーはその典型
だろうが、作曲家のフォスターだってそうだ。フォスターを
事実上モデルに山本周五郎は『虚空遍歴』を書いた。この作
品はアメリカを舞台にはめつがたの作家を描いている。アメ
リカ、といってまた舞台はハリウッドである。映画の『サン
セット大通り』の小説版というべきか。
シナリオ作家志望の青年が、撮影所のボスに散々待たされ
た挙げ句、やっろ脚本担当に採用が決まる。そこで仕上げの
ための共同執筆者としてボスから紹介されたのは、かっての
有名作家で、以下は世間から忘れらてているハリディという
男、・・・・・この「夢破れた」作家が主人公なのだが、モ
デルがいる。あの「華麗なるギャツビー」などの原作で知ら
れているフィッツジェラルドである。彼は1920年代に20代の
若さで名声をほしいままにしたのだ。それが1929年の大恐慌
以後の時代の激変、実生活の破綻から失意の下、ハリウッドの
片隅に住んでいる。
華やかな恋愛、浮名、また結婚で話題をまいた妻は発狂、彼
自身もアルコール中毒となってひたすら破滅の道を歩んでいる。
その劇的な転落はそのままこの小説に使われている。
学生時代、はリディの作品に夢中になった青年は感激に心
を踊らせてこの仕事に乗り出すが、ハリディとの打ち合わせ、
軽い気持ちで勧めたシャンパンの一杯がきっかけではリディは
禁酒の誓いを破って、再びアルコールに溺れる羽目になる。
時折天才的なひらめきも見せ、青年を魅了するが、彼の生々
しい過去の思い出が現在と混同され、シナリオの仕事はさっぱ
り捗らない。
青年はそうしたハリディのアル中ぶりに焦って、反発も感じな
がら、やはり「破滅型」の純粋さに惹かれる。結局、ふたりとも
ボスからロケ隊から叩き出され、ハリディの急死で物語は終わる。
欧州文学のレベルからすれば冗漫の極みだが主人公のいい味を出
してはいる。
作者はBudd Schulberg 1914~2009 脚本作家で「スター
誕生」、「波止場」など

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