ジョン・ディクスン・カー『コナン・ドイル』(早川、Kindle)並の推理小説家ではない理由

アメリカの著名な推理小説家、ジョン・ディクスン・カーの
大著である。翻訳書は早川書房で600頁に近い、現在はKindle
で安く読める。古書の入手は難だろう。
そこでディクスン・カーが書いたコナン・ドイルの評伝であ
る。コナン・ドイルのシャーロック・ホームズだがいつか同化
したかのようだ。単なる医師時代はさておいて、コナン・ドイ
ル自身は自らが作り上げたシャーロック・ホームズを早く打ち
切りにしたいと考えていたようだ。分かる気はするが。だから
歴史小説や演劇の脚本に力を入れていた。
実はそちらでも成功したようで、単に流行作家を超えた存在
になり得たようだが、シャーロック・ホームズ人気はどうしよ
うもない。モデルがいた、それはエディンバラ大学の外科教授、
で鋭い観察眼をもったジョゼフ・ベル教授だという。実はコナ
ン・ドイルがエディンバラ大学で医学を学んだときの先生だと
いう。コナン・ドイルは母親がフランス贔屓のアイルランドの
旧家の出身、医学から作家に転身成功を収めるが、妙な神秘主
義や唯物思想にも染まらず、またカトリックンに入りせず、
常識人として生きた。
それなら別に面白い話でもないが、作家としての大成功と同
時に南ア戦争での働きでナイトの爵位を受けたり、その結果、
「シャーロック・ホームズ卿」宛のワイシャツを受け取り、妙な
心境に鳴る。苦渋である。
ドイル自身、1903年に起きた奇怪な動物傷害事件に関わって、
冤罪の人物から手紙を受け取って、1906年のこと、47歳のドイル
は直接調査に乗り出し、観察推理で遂に無実を証明した。徐々に
シャーロック・ホームズと一体化である。第一次大戦では軍事上
のアドバイザーとなって貢献、最後には心霊学に没頭。この幕切
れについてディクスン・カーはあまり触れていないようだ。ヴィ
クトリア朝から第一次大戦前後までのイギリス史とも読めないこ
ともない。
で歴代の探偵としてシャーロック・ホームズはどうだろうか、
知名度ではダントツだが、鮮やかさ、個性的、というなら他にも
魅力的な探偵、推理者はいる。名探偵は多い、魅力度では誰が、
と思ってしまうが、ここまでのファンを集めるシャーロック・ホ
ームズはやはり偉大というべきだろう、個性的、趣向を凝らした
という名探偵は実際、他に数多い、シャーロック・ホームズはそ
れらの個性的探偵に比べ、相対的には凡庸でも、その息の長さゆ
えの魅力であろう。
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