サント・ブーヴ『月曜閑談』(冨山房百科文庫15)近代批評学の開祖の代表作、読むには教養が前提


 「冨山房」は何と読む?「とやまぼう」かなと長く思って
いたが違う、「ふざんぼう」である。この妙にいかめしい名
前の出版社、戦前から辞書で有名であるが、この世界、国内
の名著を集めた「冨山房百科文庫」の15、がこの世に批評と
いうジャンルを定着させたフランスのサント・ブーヴ1804~
1869である。文芸批評家、詩人、小説家、だが近代に批評と
いうジャンルを確立したという人物である。端的に言えば文
芸批評の開祖という存在である。その代表作が『月曜閑談』

 どんな内容なのか、巻頭は「フランクリン」だ、あのアメ
理科独立の父?避雷針でも有名なアメリカ人なのだが、

 「フランクリンは功利主義者の中では最も愛すべき、愉快
な、口達者な人物である」

 と評する、実際に知っている?フランクリンは1706~1790
だから世代が違うのだが。ともかく、事実、フランクリンは
詩を作るのは散文を磨くため、としか考えなかった人物だが、
その功利主義者が「無意識の内に、空想力の表現形式や発表
様式を持っており、これによって一廉の哲学者になるばかり
か、時には常識的詩人とさえなっている」

 常識詩人だからこそ、フランクリンの説く倹約法の記述は
「一種の親しみやすい表現の詩」となっている、と評する。

 フランクリンの書いた「貧しいリチャードの暦」に付随す
る、彼の作った箴言「立っている農夫は、ひざまずいている
貴族より背が高い」、「第二の悪は嘘をつくこと、第一の悪
は借金を作ること、嘘は借金の上に馬乗りになってくる」と。

 ブーヴはこういうのだ

 「これらの箴言の中でいくつかは、その意味や言い回しか
ら、ヘシオドスとかラ・フォンテーヌを思い出させる。特に、
気性が荒い陽気な民族の中にいて、現代風に散文で語る、ま
たミューズの訪れを受け付けていない、ヘシオドスを思い出
させる」

 たしかにフランクリンと文学との関係を見事に述べていると
思える。

 谷ゲーテ論、バルザック論などがある。

 正直、日本人が読むにはややこの内容でも難しいと思う。
内容は妥当だが、それ以前の知的教養は並の日本人ではちょ
っと容易に持てないと思う。正直、日本人には高嶺の花の著
作かもしれないが、本気で読めば有意義である。


   Charles Augustin Sainte-Beuve


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