ルネ・デュポス『健康という幻想』1964〔紀伊國屋書店〕病原性菌との共生を強く主張、見識高い文明批評


 この度の新型コロナ騒ぎ、「無症状感染」、遺伝子ワクチン
などという仰天ものが続発した現実を鑑みてこの本を読むと、
その見識高い、香り高い健康への認識、ひいては文明批評に
心打たれる。

人類は全てにおいて体内に病原菌、ウイルスが莫大存在し、要
は共生関係にある。病原菌を徹底して悪玉に仕立て、一匹〔匹
というのかどうか〕残らず排除しないと健康ではない、という
妄信の惹き起こす茶番劇は新型コロナ騒動で世界に氾濫したよ
うだ。防護服に身を固めていても、感染は避けられない。症状
はなくとも病原菌、ウイルスが一匹でも体内いたら「感染」で
あり、異常だ、という考えが何を生むだろうか?

 著者はロックフェラー研究所の研究員で著名な細菌学者、微
生物学者である。著者は最近を病気の直接の原因とは見ない。
著者は病原性微生物と人間、ないしは動物、植物との間に絶え
ざる動的な平衡関係、共存関係を強く主張し、この平衡、バラ
ンス関係は気象、食物、経済状態、労働条件、精神的ストレス
など、およそ分析し尽くせない程の多様な因子で支えられてい
るという。

 病気とは、そのバランス状態が崩れた状態を云うのであり、
過去何世紀もの間、ペスト、ハンセン病、結核、天然痘など
が消退していったが。それは決して「医学」の進歩に拠るも
のではなく、人間とそれら病原性微生物との間に共生関係が
生まれたからだという。これこそが真実であると断言する。
 
 病原性微生物に拠る発病の現象は、医学自体ではなく、公
衆衛生、栄養状態、生活のあり方、などの基本的な要因によ
ると云う。ワクチンなどの価値を過剰に宣伝するのは巨大な
製薬と利権に絡む政治家、官僚の半ば陰謀といい切る。

 小児麻痺にしても、一群の患者には同情をしつつ、ほぼ全
ての人間が小児マヒウィルスの感染しており、適応し、本来
備わっている免疫力で発病もしないという真の事実が重要だ
という。病原性微生物、ウィルスばかり目の敵にしても意味
はないという。

 現代は特異性病因論で片づくような病気は少なく、動脈
硬化症など生活に由来する病気が多く、それは人間と社会
との複雑な関係で生じる慢性疾患でらう。

 病気しないで、表向き元気で、ただ長生き、が望ましい
健康な生活ではない。人間はたとえ健康、生命が危険にさら
されようとも、たえず前進し、共生し、変化を求める宿命が
あるというのだ。倫理的、人道的な夢を持つことの重要さを
主張する。身体がデカく、成長が早いのがいいことではない
、健康とは自分の作った目標に一歩でも近づくに適した状態
だという。

 新型コロナのあまりに馬鹿騒ぎに翻弄されている現代人を
みるにつけ、一服の清涼剤を遥かに超える示唆に富む本であ
る。

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