アポロ13号事故の顛末、宇宙飛行士の死亡記事を用意していた通信社、燃料電池全て故障,マンネリ化の挙げ句、凡ミスを重ねる

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 あれは1970年5月、月に向かっていたアポロ13号に事故が
発生した。「我々が最後にどうなるのか、われわれ自身でも
見当がつかなかった。もう地球には戻れない、と考えていた」
とジェームス・ラベル船長の談話だったと思うが、87時間も
悪戦苦闘、奇蹟的に地球への帰還を果たした。もはや月面着
陸もマンネリ化と人々には受け止められ、もう誰もほとんど
無関心で注目してもいなかったミッションだった。

 日本時間、1970年5月14日、午前零時7分、ヒューストン時
間で5月13日、夜9時7分、地球から32万1千キロ離れた宇宙空
間をもう世界の注目を全く浴びないアポロ13号宇宙飛行船は
静かに月に向かっていたが、突如、事故に襲われた。アポロ
は「電圧が下がって危険な状態だ、メイン電池Bは確か、以前
にもおかしくなった」、ヒューストンも指図以外どうしよう
もないので「了解」、アポロ13号「振動でメイン電池Cの検査
器も作動しない、酸素タンクの燃料計は20%から60%の間を
往復している」

 とにかく例えばトランスワールド800号墜落事故も電流ショー
トによる火災、「電気系統の故障で」とは航空機離陸見合わせ
の理由の定番だ、アポロ13号も宇宙空間での電気系統故障は即、
宇宙のゴミ化の危険となる。

 アポロの機械船には3個の燃料電池、あの水素による燃料電
池、が搭載されていたが、このうち二つがまず壊れた。地上か
らの司令でスイッチが切られた。残る、燃料電池は一個だけ、
それでも宇宙船の電源となり得る、から何とかなる、と思った
瞬間、ラベル船長から

  「機械船からガスらしいものが吹き出している」

 そのガス噴出によるとおもわれるトラブルで宇宙船の振動が
始まった。日本時間、零時25分、さらに零時52分に3番めの
燃料電池が故障、船内の酸素供給が低下し始めた。

 日本時間、午後1時15分、ヒューストンから「第3号電池
から酸素が漏れているようだ。第3号電池の酸素供給バルブ
を閉めろ」と指令が。

 その5分後、ヘイズ飛行士は「酸素漏れで宇宙船の振動が
止まらない」と報告、だが1時59分には通常使われる司令船
内のバッテリーに15分間の電力しかないと判明、

 「司令船の電力が切れる、急いで月面着陸船に乗り移れ」
とヒューストンから指令、それでヘイズ飛行士とラベル船
長は月面着陸線に乗り移った。スワイガート飛行士だけが
司令船に残って全てのスイッチを切った。機械船と司令船は
完全に死んだ状態となった。アポロ13号の今度は月の平面地
帯でなく山岳地帯への着陸という計画は中止となったが、帰
還できるかどうか。

 アポロ13合はそれに先立つ午前10時53分、機械船のメイン
ロケットを噴射させ、軌道を終始繪、自由帰還軌道からハイ
ブリッド軌道に移っていた。自由帰還軌道はそのままの軌道
にあれば修正なく、月を回って地球に帰還できる軌道だが、
何らかのトラブルが生じても帰還可能な軌道だが、12号から
ハイブリッド軌道方式を採用していた。月面着陸の際に、
ロケット燃料を節約できる軌道である。利点は利点でも、も
し事故や故障が起これば、地球に帰還できないというリスク
があった。

 アポロ13号はそのまま自然に地球に帰還できる軌道でない
かあバッテリー全てが故障となっては機械船主ロケットの逆
噴射すら出来ない。一体どうやって帰還できる軌道に戻れば
いいのか。

 アポロ13号が宇宙空間の藻屑にならなかったのは奇蹟以上
の奇蹟だった。ともかく月面降下用のロケットを使って軌道
修正し、自由帰還軌道に戻れても、なら酸素、水、電力がは
たして帰還まで持つのか。

 要はニュートン力学の原理で動いている宇宙船だから、す
ぐUターンして戻ることは出来ない。月までの距離、80%近
区の距離となったからには、月の裏を回って変えいる軌道し
かないのである。それには2日半かかる、だが宇宙船には二
人の宇宙飛行士を48時間生かすのが限度の酸素と水しかない。
それで2日半どう生きる?なにか可能のようでも至難だった。

 仮に無事生き延びて地球近くまで戻れても、月面着陸船で
は大気圏再突入は出来ない。着陸船には耐熱材がほどこされ
ていない。大気圏再突入に絶えられるのは司令船だけ、その
司令船は機能停止状態だ。

 もはや3宇宙飛行士が無事に帰還は不可能とされたのか、
アメリカの通信社は死亡を見越して、三名の略歴、顔写真
などを送り始めていた。

 宇宙飛行官制からは矢継ぎ早に13号に司令が出された。

 「星を観察し、宇宙船の位置を測定せよ」

 「月面着陸船の電力をチェクせよ、司令船の水を樹脂製
の袋にとっておけ」

 船外には機械船の破片が漂い、星の観察もできない。月
着陸船には水タンクが二つ170リットル、司令船の飲料水
タンクには16L入で、燃料電池が産する水を当て込んでいた
が、全て故障。水の補給が続かない。残るは186Lの水だが
電子機器冷却にも必要だ。飲料用も必要だ、飲料用に使う
だけならなんとかなるが、他にも用途がある。そこで官制
は飛行士たちに節水を厳しく命じた。酸素はかろうじて間
にあいそうだった。

 月面着陸線にはバッテリーが6個も搭載されていて、節電
飛行を行えば、何とか帰還まで持つ。官制の判断は早かった、
事故後5時間後、午後5時43分、月面着陸船のりケットを逆
噴射して一刻も早く、自由帰還軌道にもどれ、と命じた。
ラベル船長らは曲がりなりにもこの命令を遂行でき、やっと
の思いで地球への帰還軌道に戻ることが出来た、あとは水な
ドを節約し、ニュートン力学の恩恵に沿って自然に地球に
戻ることができる。

 機械船の燃料電池は全て故障したが、司令船には再突入
で使う、燃料電池ではない、通常の電池3個と再突入の前
に機械船と司令船を分離し、再突入後のパラシュートを開く
ための通常電池が2個積んである。酸素も特別なタンクに
保存してあった。

 15日、「これならなんとな帰還できる」という空気が
日本のメディアにも広がったが、

  月面着陸への関心が全くなくなったことへのアメリカの
仕組んだ芝居ではないか、との疑問も取り沙汰された。

 「月面にピンポイント着陸しようと云うくせに、メインの
燃料電池が全部故障はあり得ないでしょう」

 事故後、原因が究明されたが、直接の原因は燃料電池に
酸素を送るタンクの破裂とされた。なぜか、タンクは非常
に複雑なもので、それは中の酸素が超低温の液体酸素ゆえ
であった。タンク内をマイナス147℃以下に保っていないと
液体酸素はすぐに気化してしまう。酸素タンク周辺は複雑
精緻を極めるが、巧妙に製造されている。

 可能性として小さな隕石が酸素タンクに衝突の可能性は
低くないとの意見も。しかし確率的にまずあり得ないとの
反対意見もあった。真相はなお不明である。点検で酸素
漏れを見逃し、9時間も続いていた酸素のタンクの圧力の
低下も見過ごされた、全てがマンネリ化していた。

 ともかく連続的な成功で気の緩みもあったことは否定で
きないだろう関心も薄れた。本来3人乗りの着陸船に3人
乗ったら窮屈では済まない。そこで通路を通し、司令船も
居住空間に利用した飛行士である。

 最後に

 「人命の危険をおかしてまで月面着陸をアメリカと争う
気持ちは毛頭ない。事故でも確実に宇宙船の救助ができる
体制ができるまで、我々は決して人を月に送らない」
 
 とはソ連科学アカデミーの13号事故へのコメントだが、
至って正論で負け惜しみとは思われない。

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