中野好夫:改訂版『アラビアのロレンス』1963,戦前の改訂版、ちょっと批判的になっている

戦前版の中野好夫『アラビアのロレンス』は読んだことが
ある、「アラビアのロレンス」はあまりに著名有名だけに、
知ってもいないのに、知ったつもりになりやすい歴史的人物
だ。正直、トマス・エドワード・ロレンス、1888~1935,そ
の告白的著書「智慧の七柱」は面白い、原文でバリバリ読め
るのではないか。・・・・・戦前版の改訂といいたいが、まっ
たくの書き下ろしだと思う。
元来は優秀な若手の考古学者だったT・E・ロレンスが、どう
いう風の吹き回しか、第一次大戦中のアラブ民族の独立運動支
援でトルコ軍と戦うことになったその経緯。その告白的著書は
すべて真実とは云えないだろうが、中東での民族解放運動に熱
意を感じたからだという。
最後まで正規軍の軍人スタンスを拒否し続けたロレンスが何
故に軍事的な成功を収めたのか、ロレンスはうそかまことか、
純粋に!アラブ民族解放運動のために闘い続けたのに、結果と
してはイギリスの侵略的な野心、目的の手先でしかなかった、
でロレンスは失望し、自責の念にかられる。戦後の人生は、中
野によれば「いわば、意識的な自己追放、自己の抹殺」だった
という。
しかしロレンスの生涯がいつまでも魅力を放つのは、その伝
説的なゲリラ遊撃戦、戦中、戦後の奇行ばかりではなく、矛盾
だらけに見えて、とにかく現実の行動力、恐るべき自我の強さ
それらがごった煮でロレンスの内部の存在しているからだろう
か。
無論、アラビアの砂漠、という「月の砂漠」を連想する、と
いうより月の砂漠そのもの、というロマン的な舞台、過酷すぎ
る舞台、オリエンタルな魅力、なども基本にあるだろう。その
映画も歴史的な作品だ。
戦後も新たに資料が発掘され、それらに依拠して、戦前版の
書き直しではなく、まったく新たな書き下ろしとなているよう
だ。中野さんもまえがきで「態度が冷静になって批判的にもな
っている」と述べている。
元来が学究の徒であるだけにロレンスの著作は価値を持つ。
この本ではロレンスの著書について、あまり解説されてない。「
「智慧の七柱」くらいはもっと詳しく、とは思う。
アラビアのロレンス、は永遠である。何によって永遠?真の
探求はそこに定まる。私は常軌を逸脱の矛盾だらけにある、と
考える。
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