木山捷平『臍に吹く風』1964,著者には珍しい創作小説、ユーモアはあるが品位洗練さが欠落が顕著
これは、あまり知られていない作品、単行本だ。1964年、
昭和39年だから、すでに『大陸の細道』で文部省から何か
賞を貰ってやっと木山捷平も日の目を見た、という安堵の
時期と思う。木山承平は1968年、昭和43年夏に亡くなった
と思うが、死後の人気は生前では想像できにくい人気であ
る。
この作品は私小説ではなく、創作小説である。何かモデ
ルがいたのかどうか、でも思うのだが木山承平はどうもそ
の作品のタイトルとか、特に詩だたタイトルも内容も下品
すぎるもの、また差別的表現、処女詩集『メクラとちんば』
というように地元も文学館でもの詩集は封印されているく
いだ。詩で内容があまりに卑猥、下品なものが多い。あの
出身地がそう?そなんわけはない。この作品名『臍に吹く
風』もただタイトルだけ、amazonの検索で調べると、続々、
アダルトDVDが出てきたくらいだ。つまり、何かと品位に
欠けるのである・・・・・それはあきらめるとして、木山
捷平にしたら珍しい創作性のある小説である。どこまで書
けているのやら、と思うが、
ある年、五月の朝、22歳の警視庁巡査の某が皇居前外苑
をパトロールしている時、一人の若い女性に出会う。地方
で離婚して上京してきたという女性だ、ここからこの話は
始まる。名前は張歩キリ子、もう少し洒落た名前をつけれ
ばと思う、捷平は本当に田舎臭い。キリ子は、日比谷公園
で元警視庁捜索第一課長の老人に聞いて、、東京でも立派
なテイチク・ホテルに宿泊したいと行くが、断られる。次
に別の青年に聞いて、第三ホテルに宿泊する。翌日、彼女
は銀座の宝石店で。所持していたダイヤを鑑定してもらい、
時価250万円もすると言われ、仰天する。
まもなく、彼女は朝鮮人ダフ屋から聞いた小松川という
名前が気にいってタクシーで荒川放水路に行き、ボートで
大穴を当てて12000円ほど儲ける。それを教えてくれた予想
紙売りの青年と親しくなる。
こんな具合に、この小説、新たに登場人物を次々と、と
ヒヤヒヤさせるが、一転し、キリ子の身の上話を綴る。郷
里は山陰の漁村、捨て子だったのを寺の住職に拾われた。
ここらは最初、姫路師範を出て山陰出石の小学校教員経験
の性もあるのかどうか、18歳で帰還兵の飯盛栄作と結婚し
たのだが、初夜で夫が「お嬢様、蕾の花を摘んでいいです
か」などと聞く臆病さ、小心さにイヤケがさして、だが
、これも木山捷平の田舎臭い品位のなさが露骨で本当にイヤ
らしさを感じさせる。で、産児制限講習会に久しぶりにあっ
った同級生の大学生の穴瀬俊吉と通じる。
キリ子は戦時中に横穴式の防空壕で俊吉と合い挽きを続け
るが中は真っ暗で、底へ忍び込んできた朝鮮人密航者と通じ
てしまう。相手の少年は恐縮し、キリ子にダイヤの指輪を与
える。キリ子は夫のすべてを告白し、離婚して上京する。
でも話の辻褄がある?戦時下はまだ朝鮮半島は日本、密航
者というのが適切なのか?そんな少年がダイヤの指輪とは、
また滑稽だ。キリ子は予想表売の青年と一緒の釣り船やをや
るところで話は終わるが、ちょっと相変わらず品位がかけて
、奇妙な設定が多い。とにかく
木山捷平って男は本当に作品が洗練されない!
作中でわりと大きな役割の、「おばばん」なる女性がキリ子
は結婚した時、62歳、二年後亡くなったときは60歳、酒でも
飲みながら書いたと思うが、これもひどい。
それなりにユーモアだが洗練と品位を欠いている。病弊で
ある。
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