宮崎信江『裸族シャバンテス』1960,日本の大学院に留学したブラジル日系二世のアマゾンの紹介

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 宮崎信江さんは資料にもよるが1931年の生まれとか、この本
では1934年、生まれとされている。1952年にサンパウロ文理科
大学を卒業された、民俗学と社会学を専攻、1932年、アマゾン
流域のシャバンテ、シングー川の流域を単独調査、1958年から
東大文化人類学教室に留学、1961年3月まで滞在された。

 宮崎信江  当時

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 面白いのは日本に来られての感想である。

 「日本留学が決まって、横浜港に着いたのが、今年9月10日、
初めて見る日本でしたが、やはり人の多さ、予想以上でした。
また道路も車も家もみんな本当に小さい、瓦屋根の家に洋間が
多く、案外、日本的なものって残っていないと思いました。
ブラジルでは初対面でも気安く話しますが、日本人は感情を表
に出したがらないですね。理解しにくく、打ち解けにくいです。
ちょっとシャバンテ族に似てる部分がありますね。

 それと男女が区別されることが多いですね、でも感心するの
は日本の工業力、目覚ましい発展です。でも似合いもしないの
に女性が髪を赤く染めたり、なにがいいのか、ロカビリーを踊
る若者、まあ、ブラジルもサンバがありますが、ちょっと日本
人はサマになりにくい部分があります。文部省から毎月二万円
いただいてますが、下宿代に一万円消えます。ですからブラジ
ル語を教えて、アルバイトでお金を稼いでいます。

 実は日本人には靴を屋内で脱ぐのが当然なんでしょうが、こ
れが本当に煩わしく不自由です。ブラジルは夏と冬、だけみた
いですが日本は四季がありますね、いろんなことが分かってき
ました。ホームシックになる暇はないです」

 さて、社会思想研究会出版部からの宮崎信江著『裸族シャバ
ンテス』アマゾンの奥地原住民の調査である。

 著者によるとブラジル原住民のインディオは以下の四種に
大別されるという。

 1.白人と接触したことで絶滅したり、絶滅に瀕しているもの

 2.白人と接触してのち、現在は安定的状態にあるもの

 3.白人との接触からの日が浅く、まだ判断できかねるもの

 4.まだ孤立し、白人などの一切接触がないもの

 このうち4がアマゾン、女人国川の名の起源となった。

 密林の奥の伝説的な女性だけの部族、も含まれるが、人類学、
民俗学の研究の対象は3の接触して日が浅いインディオ、とな
るようだ。

 この本はブラジル中央部に居住し、危険性で知られていた
シャバンテ族という、知られてから10年程度という部族、著者、
宮崎さんが単身で入って行って三ヶ月間、その生活ぶりをつぶ
さに観察した。

 彼らは通常は男女とも全裸で暮らしており、使う道具はごく
簡単なものだ、船を作るすべも知らず、典型的な原始的な農業
を営んでいる。髪のシラミは全て取って食べる。火は木をすり
合わせ発生させる、その生活ぶりは人類の数万前のレベルと思
われる。ただ発展性はないから、イコール、過去の再現でもな
いだろうが。

 宮崎さんは日本語でこの本を執筆だが非常にまとまった文章
である。ただし女性故に、いまいち、シャバンテ族の中に入り
込めなかった部分はあるようだ。それは率直に述べている。
研究者なので筆致がぶっきらぼうである。それもちょっと難点
だろう。その食生活、「シャバンテ族は酒を造らない」と僅か
一行、もっと詳細に、とは思えるが。外界からの酒も全く知ら
ないのかどうか。もっとエピソードもふんだんに、とは思うが
、ないものねだり、だろうか。三ヶ月の共同生活は長いようで
実はほんの入口でしかないようだ。

 でも屋内で靴を脱ぐという習慣はよほど異端らしい、日本人
の大きな特徴だろうか。実は世界では靴を脱ぐ国の方が多いの
だ。

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