チャールズ・ピーターズ『虚像の王国』1982、TBS Britanica,アメリカ連符政府の身の毛もよだつ実態

現在は世界の事実上の「ビッグワン」として世界を仕切る
超大国アメリカだが、それはすなわちアメリカ連邦政府であ
る。日本やイギリスの議院内閣制と異なる大統領制、は当然
として、その大統領制もアメリカ連邦政府はまた特異を極め
る。現在はトランプ復活か否かで世界を騒がせるが、実は
根底に「アメリカ連邦政府」の在り方がある。
つまりアメリカでは大統領が交代すると連邦政府の主要ス
タッフもう交代する。選挙運動に功績があった人物がそれな
りの地位について、ワシントンでは通常は3000人ほどの上級
職員の入れ替えが行われ、新政権が誕生する。
「だが、大統領選の結果に関係なく、首都ワシントンで生
き残り、恒久的に生存できるまさに恒久政府が存在している。
それは裁判所、軍部、外交、非公式だが巨大な力を持つ報道
陣とロビーグループである」
という。その実態とは、である。
原題は「ワシントンは現実にいかに機能しているか」である。
うすうすは感づいてはいたが、日本のメディアはいたって連
邦政府の実態を伝えないから、読めばうすら寒いきもちになっ
てしまうだろう。世界唯一の超大国、その政治の中心がこの連
邦政府なのである。
アメリカを動かすロビイスト、利益集団から金を集め、議会
や政府の有力者に日頃の顔に物を言わせ、圧力団体に有利な方
向に政策をねじ曲げる。多くの人の名を使った多額の政治献金、
ときにロビイストの活動が一国を誤らせる、1968年のハンフ
リーとニクソンの対決、世論調査ではハンフリー優勢だった。
さらにアメリカと北ベトナムとの平和協定が実現しそうな寸前、
そうなると圧倒的にハンフリー優勢、そこで南ベトナムのロビイ
ストだったシェノールト女史はニクソン有利に導くため、南ベト
ナム政府に強く勧めて和平交渉を葬らせた。ニクソンが僅差で当
選を決めた。
官僚組織は次々と無駄な仕事とポストを増やしていく。官僚の
、官僚組織の利権が脅かされたら、議員への露骨な活動を行い、
政策を阻止する。余計なポストが増えるなかり、削減されるのは
下級官吏である。
報道陣はかっての、といっていいのか、各省クラブ制がメディ
アによる報道操作の温床となったように、同様の不敗の体質があ
る。
肝心の大統領政府は、そこのは側近の中傷、さやあてがあり、
強い大統領演出のため冷静な判断が歪められる。キューバ危機で
の隠されたエピソードは大いに参考になる。
日本の議員内閣性とて、法律、政策はすべて与党幹部と官僚の
談合できまる。保守的政治風土では小選挙区制である以上、選挙
結果はやる前からわかっている。アメリカは日本より民意が反映
するのかどうか、二大政党制のち茶番劇とも言える。しょせん、
国の政治制度など理想から程遠いのだが、アメリカ連邦政府も大い
に問題があるわけだ。古い本だが基本的な事情に変わりようはない
のである。
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