P・D・ジェイムズ『女には向かない職業 女探偵コーデリア・グレイ』早川書房、

ハヤカワ・ミステリ文庫、最初出たのは1975年だが今なお
連綿と刊行されつづける佳作。翻訳者は小泉貴美子。
警視庁の(警視庁と訳している)刑事だった男が退職し、私立
探偵となる。彼はコーデリアを仕込んで共同経営者に仕立てよ
うと必死に仕込んでいく。まず一通り、教育できた頃、元刑事
はガンになって自殺する。私立探偵オフィスには彼女と拳銃と
を残して。かくしてまだ未経験な若い女性、コーデリアが、女
には向かない職業の私立探偵になることになる。
コーデリアは元刑事の葬儀から帰った時、最初の依頼を受け
た。名の知れている科学者、自然科学者のロナルド卿からその
息子が自殺した原因を探ってほしい、ということだった。ロナ
ルド卿の息子、マーク・カレンダーは優秀な学生だったが、大
学をやめて庭師になっていたが或る夕べに自殺を遂げた。
コーデリアはマークが住み込んでいた家の、しかも彼がそこ
に暮らし、そこで自殺した小屋に寝起きし、大学街ケンブリッ
ジを探ろうとして、生前、マークと親しかった若者たちとつき
あう。
そうしていたら縊死をしたマークの姿と同じように吊るされ
た枕に脅かされ、執念深く尾行され、挙げ句に井戸に投げ込ま
れ、蓋をされるという絶体絶命の危機一髪、だがそれを突破し、
彼女は勇敢に立ち向かう。
そのうち、彼女はマークは自殺に見せかけた他殺であったと
確信を抱き、実は最初の死体の発見時は気持ち悪い下着女装を
していてテーブルの上にはヌードの女性の写真が三枚あったと
いう状態だったと知った。だが発見者が30分後に戻ったら、今
度はブルージンズだけを付けていて、女装メイクは拭き取られ
ていた、テーブルに写真はなかった、・・・・・
とまあ、これを例えば横溝正史ものを比較したらどうだろう
か、謎に導く構成がなかなか巧みであると感じる。まず文学性
もある。解決後の、大団円の嫋々たるというべきか、余韻が、
これが正史の「悪魔の手毬唄」、事件解決後、刑事と金田一が
奈良に遊んだ、その別れ際の、・・・・・に匹敵だろう。
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