ボリス・ヴィアン『日々の泡』(別邦題・うたかたの日々)(原作1947)夢想による騒ぎばかりの荒唐無稽な話

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 1947年に発表されたフランスの小説、作者はボリス・ヴィ
アン、1920~1959,トランペッターで音楽活動も行ったとい
う。国立高等興行学院を出て技師として働きながら創作に励
んだ。1946年、『墓に唾をかけろ』は筆禍作品となった。

 日本でのこの翻訳は1970年、実はフランスではあまり読者
数を持たない過去の作家がその死後、しばらくしてブームと
なるときが往々にして起こるというが、ボリス・ヴィアンも
1959年の亡くなって、その後1960年代半ば過ぎからフランス
国内で脚光を浴びる存在となって、その余波で日本でも翻訳
が出版された、ということだろうか。1960年代後半からのボ
リス・ヴィアン再評価、サルトルとも深いつながりがあった
という。

 前衛、アヴァンギャルドという言葉があるが、なんとも自分
独自の感覚と想像力に浸りきって、また自己中心的な動機で展
開する小説はその形容に値するのだろうか?言葉遣い、イメー
ジが誠にヴィアン的ということで、フランス語で読めばよりい
いいのだろうが。
 
 パリに住む若者、コラン、彼のコック、ニコラはものすごい
才能があり、ジャズの演奏、その音でいろんなカクテルを作る
カクテルピアノを備えている。コランの感受性は鋭く、ユーモ
アがあり、ときにグロテスクである夢想、幻想そのま真が起こ
るという荒唐無稽な不思議な環境の中で、コランはイジスでの
パーティーに招かれ、そこで出会ったクロエという娘と恋に落
ちる。

 「彼女はふたたびにっっこりした彼を見つめ、もう一度にっ
こりした。

 『僕をバカにしているんですか』とコランは哀れっぽく、『
親切じゃないんだ』、『わたしとあえて嬉しい?』「嬉しいさ』
とコラン、二人は歩きだして最初の補導をあるいていく。小さ
なバラ色の雲が空から降りてきて、二人の傍らに寄ってきた。
・・・・・その雲が二人を包みこんだ」

 この二人は結婚するが、妻に毎日、大量の花を贈る夫は貧困に
なった。妻の肺臓に睡蓮の花が咲き、彼女は病に倒れる。

 二人の友人はサルトルのかぶれた哲学者の本を大量に買い込み、
破産する。その恋人は心臓をえぐりとるハサミで哲学者もどきを
襲撃し、街が混乱する。

 何か騒ぎばかりの話のようだ。基本は現実に打ちひしがれる若
者の夢想だろうか、

 だが、ちょっとついていけない、無茶な話だ。よくいうならば、
あくまでイメージ優先の万華鏡というところか。文学に重厚さを
求めるなら怒りに襲われそうだ。

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