村松友視『薔薇のつぼみ、宰相・山本権兵衛の孫娘』偉大なる祖父の孫という共通点

山本権兵衛、明治の宰相、海軍軍人、海軍大臣、外務大臣
も歴任、高校で日本史を学べば出でくる人物、本人は「権兵衛」
を本当は「ごんのひょうえ」と読ませたいのに「ごんべえ」と
読まれるのを非常にイヤがっていたという。でも普通はシンプ
ル優先で「ごんべえ」と呼ばれている。とまあ、実は、村松梢
風の孫、村松友視、1982年、取材先のメキシコのレストランで
ふと「山本権兵衛の孫娘」という言葉を聞いて。妙に心に残っ
たという。いつか必ず彼女を会って取材し、彼女について本を
書くだろうと予感したという。
それというのも村松友視はあの著名な作家、村松梢風の孫で
あり、歴史的著名人の孫という共通点を持っていたからである。
共通の地盤、運命を持っている、と合い通じるものがあったか
らである。そこで「著名な祖父の孫と自らの薬をふって生きる
者の感性」の掘り下げを行いたいというものである。
著名な祖父の孫という、その裏側でなされるのが、「父」の
消去である。なぜそうなる?その問題意識を著者の生きざまに
即して思いを綴った第一章が非常に面白い。この第一章が独立
的な内容だと思う。
この世には「特別な人」と「何でもない人」の二種類がいる
が、祖父が「特別」で父親は「何でもない」のである。祖父は
破格の存在である。単に偉い人を超えているのだ。
その共鳴する部分を、主人公を山本権兵衛の孫娘の、かって
の伯爵令嬢でもある山本満喜子とする。終戦後は闇屋をやった
り、キューバ革命ではキューバ屋とまで呼ばれた。ときに大き
く話題となって週刊誌に載ったこともある。その生き方を規格
外の祖父を持つ孫として共通の村松友視が追求するのだ。彼女
の自伝の草稿も混じえている。
山本満喜子はカストロの友人、闘牛士のマノロ・マルチネス
と親交を持つ。生涯、破格の存在に取り憑かれたような姿が浮
かんでくる。破格の祖父との一体感で生きた少女時代、この記
述がいい、規格外に生きようとする彼女のナイーブな精神にこ
そ根源があるという。
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