大林美佐子さんを殺した地域ステータスをめぐるエゴ。南青山の児童相談所反対との共通性

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 2020年11月17日、東京渋谷区幡ヶ谷2丁目のバス停、広島市
出身の大林美佐子さんはその近くの住む吉田和人(当時46歳)に
ポリ袋に仕込んだ石で後頭部を殴られ、脳挫傷で死亡した。
大林さん当時、派遣会社に登録してスーパーなどでの試食出張
の仕事を行っていたが、新型コロナ騒動で非正規ゆえの失職、
杉並区のアパートに住んでいたが家賃が払えず、立ち退く羽目
に、ついに最終便が出てのバス停に寝る(横になるわけではない)
ホームレスに転落した。実は日本人誰でも、非正規は特にいつ
陥るか分からないホームレスである。

 近くにホームレスがいたら、基本、さほどいい気持ちはしな
いものだが、何よりも保護の対象である。生活保護、があるが
生活保護など必要もない人が生活保護を受給し、本当に生活保
護が必要な人がそれを受けられない、そんなケースを日常よく
見る。大林美佐子さんのような誠実で真摯な人は生活保護申請
を潔しとしないのか、親族に迷惑をかける、などの気持ちはあ
ったと思う。

 ここでその幡ヶ谷、父親は山一證券に勤務し、退職後、酒屋
を経営、今はスーパーでもコンビニでも酒を販売できる御時世
だが、以前は酒屋でしか酒は購入できなかった、原則、だから
酒屋という商売は絶対的な特権をもつ絶対不安もない業種だっ
た。だから酒屋経営者はその有り余る?収入でコーポ、アパー
ト、マンションなどの賃貸住宅を続々建設した。高級車を何台
も買う酒屋も多かったものだ。昔語りとも言えるが、地方では
車でスーパーなどで酒を購入だが、東京のような街はなお酒屋
の特権が健在という事情はある。そもそも吉田の家は戦後間も
なく酒屋を営み、和人の祖父の代からだが、父親も証券会社を
辞めて家業を継いだ、和人も数年前から配達などを手伝ってい
たというが、競馬に凝るなど真面目な商売人となる資質には
およそ欠けていた。問題児でもあったという。

 だが戦後、東京で酒屋を営んだ結果、家は賃貸マンション
建設などで盤石の資産家となっていた。そうなると、気にな
るのはそのエリアの地価も含めての価値、ステータスである。
高級、すみやすい、妙な人間がいない、などでそのエリアの
ステータスは維持される、資産の価値も維持される、さらに
上昇と考えがちである。和人のように能無しで商売にも向い
ていない、ならなおさら多分、親が所有の賃貸マンション
は何よりも重要なものであり、エリアの価値を低下させる
者へは憎しみを抱く、朝の清掃に参加も要はその云うなら
ば地域エゴが根底にあったのは云うまでもない。「他所に
移ってほしい」と吉田和人が大林さんに言っていたという。
「この幡ヶ谷はステータスが高いんです、東京でも貧乏人
が多いエリアはあるから、そちらへどうか」ということだっ
たはずだ。

 田舎でもエリアにホームレスがいたら、資産価値が?など
考えない。東京のように地価はそもそも高くはない。田舎は
人口も少なくあのような結果、ホームレスになった、という
ような人は滅多以上にいない。田舎なら生活保護申請もそれ
ほど敷居は高くない。しかし東京の資産家の心理は田舎の人
間とは相当に異なるようだ。

 事件後、あの付近でのインタビュー、初老の男性「早く、
人が忘れてほしい。幡ヶ谷は『いいところだからね』、
そのあたりの飲食店の経営者などに話を聞いても温かい同情
をこめた言葉は全く返ってこなかったという。冷たい街であ
る。

 吉田和人は持ち資産の価値を保つため幡ヶ谷に大林美佐子
さんのような人が、たとえバスの最終便が出た後にバス停の
排除椅子!に座っているだけで許せないと考えたのだろう。
酒屋で金を儲け、賃貸マンション、こうなると幡ヶ谷のステ
ータスがやたら気になり始める。「幡ヶ谷の外に出てほしい」
と思ったが、大林さんは移動しない、そこで、である。

 それはちょうと南青山に児童相談所を設置しようとしたら、
地元の資産家がメインだが、「南青山のイメージが悪化する」
という反対がうるさかったのと同じ発想である。児童相談所
くらいで、「イメージ悪化」というほどの奢り、エゴがある
わけである。

 確固たる地位、職業、また資産がある、などというのでな
ければ東京などに住むものではない。失業したら、住む場所を
失ったら、失いそうになった、東京の区役所は冷たい。金持ち、
資産家が多いのである。

 大林美佐子さんがいたら、所有の資産価値が低下する、くら
いに考えたわけだ、吉田和人は、全くバカバカしい、許されざ
る浅ましいエゴというほかはない。

 ただ大林さんもなぜ助けを求めなかったのか、という点は、
どこまでも自己責任が強かった、というお人柄だったにせよ、こ
れは残念とした言いようがない。限界を通り超えている状況と自
らを認識してほしかった。
 

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