金関寿夫『ナヴァホの砂絵、詩的アメリカ』1980,結果としてアメリカ現代詩の至上の入門書となっている
著者は金関寿夫、1918~1996,島根県出身、同志社大学卒、
アメリカ現代詩、アメリカ先住民の詩が特に専門の英文学者、
1992年に読売文学賞受賞、まずアメリカ現代詩を専攻という
ユニークさが光る英文学者である。
言うまでもなく「ナヴァホの砂絵」という民俗学的存在自体
を述べたものではなく、アメリカ現代史から著者のピックアッ
プした作品の解説である。だいたい日本でアメリカ現代詩専攻
という研究者、アメリカ現代詩に通暁しているという研究者は
少ないし、日本人はほぼ無関心で読むこともない。フランスの
詩とかリルケ、ドイツの詩、まあ日本の詩人、中原中也、萩原
朔太郎とか、著者ほどのアメリカ現代詩に入れ込んだ人も稀だ
と思う。
で取り上げているのがアメリカ現代詩人のWallace Stevens,
アホーレス・スティーヴンスの「Thirteen ways of llookinn at
a blackbird」、「黒ムクドリを見る13の見方」
二十の雪山の中で
ただ一つ動くものは
黒ムクドリの眼だった
この最初の三行を金関は『碧巌録』、・・・・・え?「碧巌録
って、だが中国の仏教書、禅宗の語録だそうだが、その中の
枯木裏竜吟 髑髏裏眼睛
をすぐに思い出させる、と云うのである。
ウォーレスのその同じ詩の
「黒ムクドリが視界から去ったとき
それは多くの円の一つの
端をしるした」
は『臨済録』の「一箭過西天」を想起させるというのだ。
その広範で深い!教養に驚くが、大した感受性だ。ウォーレス
の詩の鮮明さ、簡潔さを瞬時に明らかにするという。
ウォーレスのその詩の
「川は動いている 黒ムクドリは飛んでいるに違いない」を俳
句に近いという説を一応は認めても、「飛んでいる」でなく「ち
がいない」としているのは俳句の世界と異なるという。
ともかくアメリカ現代史から好きな詩人だけを金崎さんが選んだ
にしても、結果としてだが、アメリカ現代詩、の無上の入門書とな
っているとは思う。とにかくアメリカ現代詩につての本は日本では
乏しい。自分の好きな詩人について、自由気ままに語っただけなの
だろうは、根底基盤の教養、見識が凄いので、優れた本となってい
るのではないか。
まだまだ内容は続くが、私も勉強しないと読み解けない。
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