都筑道夫『夢幻地獄四十八景』、星新一のショートショートと比べたら面白い

2003年の長女が住むホノルルで74歳で亡くなった都筑道夫、
私は都筑とくると、どうしても「マックスウェルの悪魔」の
物理学者、熱力学の都筑卓司さんを思い浮かべてしまうが、別
に何か縁戚関係があるわけではない。だいいち都筑道夫は全く
のペンネームである。デ、ショート・ショートをよく書いたと
いう都筑道夫。ショートショートと云えば星新一さんだが、星
さんは会社経営に携わったあまりの苦渋から逃れるために執筆
を始めたという。
日本の文学史で云うとあの小樽?の岡田三郎、『三月変』の
作者だが、フランス滞在経験を生かして「コント」を日本に導
入したという。私はまだ岡田三郎のコントなるものを読んでい
ない。書いたわけではなく提唱しただけだったのだろうか。ま
た川端康成のお馴染みの『掌の小説』、大衆文学では渡辺温の
『兵隊の死』というなかなかの傑作もある。戦後は山川方一と
星新一、それと都筑道夫となるようだ。
実際、都筑道夫は長編小説も書いてのかたわらでショートシ
ョートであった。星新一のようにショートショートばかり書い
たわけではないからその数は星新一よりは少ない。
で『夢幻地獄四十八景』は「異端派(いろは)かるた」と48篇
と「狂訓カルタ」12篇から成る。
内容は星新一のSF的な発想のもの、もあるがSFもの、時代物
、恐怖小説、落語、ミステリーなど多様多彩である。いずれも
夢幻地獄を閉じ込めた風情だ。
冒頭に収録の「意味深長」は長距離バスに乗りあわせた老人
と若者の話だが、「言葉の意味は、意味どおりとは限らない」
ことを教える、まさにい意味深なもので実に結構している。ま
ずは佳作だ。
「健忘症」は傑作だ、山津波に襲われたショックで記憶喪失
に近い状態の正体不明の二人の男、気がつくと二人は手錠で繋
がれている。なら刑事と護送犯人か?でも二人のポケットは空
っぽ、何も入っていない。二人は逃走の囚人なのか?だが手錠
の鎖は簡単に切れた。二人は街に出て安宿に泊まる。女性従業
員がジロジロ見て「テレビか新聞で見たことがある」という、
翌朝、駅で切符を買おうとすると、ベンチにいた男が立ち上が
った。二人は夢中で逃げ出した、・・・・・謎めいた設定だ。
二人は何者なのか、・・・・・・Kindleでもすぐ購入できます。
星サンよりかなりウィットが効いている気がする。
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