ハンス・クルト『夢辞典』1978,夢の世界は説明できるのか?

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 夢は説明できるのか、もちろん、明らかに簡単に説明できる
夢はある、苦しめられた試験の思い出、学校生活の苦渋な記憶、
などと直結の夢は説明は容易でも、夢として最高に下らない。
現実を離れた夢幻の世界であればこそ、夢として価値がある。
そのような夢幻的な夢でも必ずどこか過去の記憶につながるは
ずだが、どうにもそれも有り得そうにない夢も少なくない。

 で名古屋にあった自由都市社の最初の刊行である。その信条
は「自由な独立都市の自由な連合にこそ『中央』のくびきに屈
辱の生を強いられてきた『地方』都市住民の最後のユートピア
である。都市に自由を!市民に自然を!を叫ぶ。

 著者はスイスの著名な夢学者!のハンス・クルト Hans Kurth
原著は1976年の刊行である。

 夢学者とはいうが、クルトは40年以上に渡る臨床的実験、ドイ
ツ語では最初の夢辞典をものにしたわけである。

 でも本当に普遍的な夢の解説、分析ができるのか?

 第一部は夢と夢の象徴言語、第二部は夢の解釈、第三部が夢
の象徴辞典である。

 第一部に

 原始人や偉大な古典諸民族、つまりエジプト人、ギリシャ人、
ローマ人の夢は、我々の時代の、すなわち、東京、モスクワ、
ロンドン、ニューヨーク、ケープタウン、、ハンブルクの人間
と基本的に同じです。夢の言語は数百年、数千年にわたって全
く普遍です。

 とあるのだが、、それが本当だと思えない。さらに、そのし
ばらく後に、

 「この夢辞典は、エジプト、アラブ、中世などの、種々の古い
夢の書物、フランスのオカルト学に見られる諸解釈、現代の精神
分析学、私自身の臨床的解釈をもとに作成されました。ここで強
調すべきは、どんな夢でもこの事典の助けを借りたら、夢が解釈
できるわけではないこと、またここに解説されている象徴を盲目
的に使用してはならない、ということであります」

 かくして、個人的な夢の言語を開発し、自分自身の夢事典を作
ることをすすめている。

 この「夢事典」では例えば

 霜柱:霜柱を見る、素晴らしい、しかしクールな恋人があらわれ
    る。
 寒暖計:寒暖計を見る、信頼の置けない人物との間でいやな経験
    をするだろうという予感。

 黄金虫:コガネムシを見る、迷惑ごと、あるいは難事の予想
    コガネムシを捕まえる、これは難しい問題が好転する。


 どう考えても夢事典とはいうが夢事典ではないだろう。夢は現実と
かかわらない夢幻的夢こそ素晴らしい、分析など意味がないと思って
しまう。

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