エズラ・パウンド(Ezra Pound):『詩学入門』1980,冨山房、アメリカきっての「大詩人」によるテキスト

Ezra-Pound-young-349x349.jpg
 日本人一般にはおよそ馴染みはないが、エズラ・パウンド、
Ezra Poundは現代のアメリカ詩人では圧倒的な存在であった。
一度、その英語のwikiを読めばその圧倒的な膨大さに驚くはず。
隠棲的な詩人ではなく、まず文学運動のオルガナイザーとして
の業績が重要だという。云うならば、モダニズム文学の興行師
であった。1885~1972,ジョイスもパウンドに認められ詩壇!
に登場した。エリオットもパウンドの添削を受けた、という。
年齢的には先輩のイェイツもその文学的助言を受けていた、と
いうのだ。

 かくして、その「詩人の教師」えあるパウンドの書いた、詩
学のテキスト、教科書だ。これほどの超大家が書いた詩につい
てのテキストなのだから、日本の検定教科書などを想起しては
ならない、まったく容易でない癖のある本である。訳者の説明
では「彼の詩のマニフェスト」とか「モダニズム詩入門」なの
だという。
 
 その筆致、内容は、英語を味わうところまでいかないが、訳
文からでは非常に突っ慳貪で厳しいもの。断片的な言葉で叱り
つける。ジョークをよく言う。何か啖呵もきる。その背後には
並々ならぬ信念と自信があるわけであろう。

 で、詩とは。確かにこの世に、「詩」そのものがあるわけで
はないと私は思う。芥川龍之介の「詩的精神」だ。

 パウンドは云う、「詩」とは?

 「凝縮」だという。

 「偉大な文学とは、まさに可能な限り、意味を充電させた言
語でる」

 「アメリカ滞在のある日本の学生が、散文と詩の区別を問われ
て、答えたものだ。『詩とは骨子と要点から成り立つ」

 これがイマジズムの詩論の精髄だという。生徒はこれを叩き込
まれる。

 で第二に、パウンドが云うには

 詩を書くためには、過去のすぐれた詩を読み込め、何度も、で
ある。

 「数多くの詩篇の間を右往左往より、最上のものを極く少数で
も調べたほうがいい。その方が学ぶことは多い。批評家の高く評
価の詩篇を最上の詩と思いこむほど、害毒はない」

 「いまでもホメーロスを半ページでも読めば、かならずそこに
旋律上の発明が見つかる」

 「英語の作品だけ読んでもいても得るものはない」

 ここから読むべき必須リストを提示だが、ロマン派詩人は一人
もいない。

 「好きな詩を選び、をの韻律で書いてみよ」

 かくして1935年頃に、彼の文学革命は成功したかのようであっ
た。その頃の文章だ。

この記事へのコメント