蓮實重康『雪舟』1958、弘文堂、古書だが雪舟の評伝としては今なおベスト
もう刊行されたのは1958年で60年以上前だが、このような
歴史書ではそれは問題とならない。いまなお、入手は難だが、
雪舟の評伝としてはベストに近いと思う。
雪舟の伝記、評伝は実は多い、子供向けのものもあるが、と
にかく雪舟のその伝記となると、またその作品の確定はわから
ない点が多い。決定的証拠が新たに出る可能性もまずないし、
どこまでも推測になる。備中国、今の総社市の出身で地元の寺
院に宝福寺に小僧に入り、罰で柱に括られ、泣いて涙で足の指
で鼠の絵を描いたら、・・・・・という有名な逸話があるが、
これはどう考えても作り話もいいところだろうが、何か雰囲気
は表している。江戸時代、狩野派が雪舟を神格化するための創
作エピソードである。
本書によると1467年、応仁二年、48歳のとき、大内氏の遣明
船に乗って入明、それは事実としても、それまでの画歴はほぼ
不明である。明滞在中の行動、画の修行、そこから独自の画境
を開拓してゆく経過から晩年にかけての個々の作品の評価、定
説という確定的評価は難しい。「天橋立図」や「益田兼堯像」
などの中世に燦然と輝く作品がいかに形成されたか、難問だと
いう。
なにせ具体的事実などさっぱり不明として、小学生向けの「
雪舟さん」のように、雪舟の人と作品を優しく解説ふうに述べな
がら、謎の解明に野心的な挑戦を行っており、実証主義的研究を
怠らず、他方で独自に雪舟の人間形成を突き詰めるスタンスは
評伝としてはきわめて妥当だろうか。
つまり雪舟を東山文化人として、それ一色に塗りつぶそうとい
手法に反対し、雪舟は幕府文化の潮流から外れた在野の画人であ
あったと力説しているのだ。それが作品に、如何に結実したのか
を、その過程を作品に探っているのは実に読ませる。
実証的手法と云って、直接的史料は超少ないが、入明以前につ
いては興味深い仮説を提示しており、旧来の説に挑戦したようだ。
何より人間・雪舟を追求し、社会史的、文化史的な総合的視野に
立っている。
2023年、「雪舟と玉堂、二人の里帰り展」岡山県立美術館
雪舟
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