『名探偵カッレとスパイ団』アストリッド・リンドグレーン(岩波少年少女文庫)

夏休み、最近は課題図書なんてあるのかないのか、あまり
読書にひたる子供は見ないようにも思えるが、それは私が知
ないだけ、実はいつの時代も子供は本が好き、なのだろうか、
どうか。やはり今どきの子供はゲームなのだろうか、
「長くつ下のピッピ」や「やかまし村の子どもたち」など
で知られるスウェーデンの児童文学作家、アストリッド・リ
ンドグレーンのシリーズ三部部作の「名探偵カッレ」、その
最終作が「名探偵カッレとスパイ団」である。いつの時代も
子供たちは自分たちが探偵になるのを夢見て遊ぶ、日本の「
少年探偵団」小林少年などを思い出すだろう。小学生、もち
ろん男子だが、仲間を集めて、例えば街の空き家を探検した
り、・・・・・もうそんな子供たちは日本にはいないのだろ
うか。
さて、名探偵に憧れているカッレ少年、靴屋の息子アンデ
ス、パン屋の娘、エーヴァの仲良し三人組が様々な事件に巻
きこまれる、という構造である。
二年前の静かな夏の夜、白バラ軍と赤バラ軍との間で「聖
像」をめぐる戦争が始まった。ビョルク巡査は「聖像」をめ
ぐっての争いに、ちょっと奇妙な変わった形の石ころのこと
なのにと呆れる。要は石ころでしかない聖像をめぐっての争
奪戦はではないか、と訝しげにつぶやく。石ころに過ぎない
「聖像」を巡る子供たちの争奪戦、は毎年、春学期の成績表
の親の点検が終わるとともに始まって、秋になって日が暗く
なり、冬の寒さが訪れると無期限休戦となる、という仕組み。
永遠に夏休みや、微風、キラキラ光る太陽と密接にむすび
つく、このバラ戦争、白バラ軍と赤バラ軍に分かれて戦われ
るのだが、主人公のカッレ、Kalleは白バラ軍、頭の切れる、
不撓不屈の名探偵とも自認んかれは白バラ騎士と同時に名探
偵、参謀役。名誉ある隊長は靴屋の息子、アンデス、紅一点
がパン屋の娘、エーヴァ・ロッタ。
物語は少年少女騎士による勇敢勇猛な暗夜の戦いの叙述、
白バラ軍が、防弾軽金属の発明者のエークルド教授、ラスム
ス坊やの誘拐事件に巻き込まれる息詰まる場面への展開する。
そこから、青い海に点在の数しれぬ緑の島々、の中のある小
島での白バラ軍の目覚ましい活躍が始まるという次第、
乱歩の「少年探偵団」と同じく、大人たちも重要な登場人
物となっている。カッレ、アンデス、エーヴァ・ロッタそれ
ぞれの活躍、非常に無邪気な子供っぽさが特徴であり、児童
小説の白眉となり得ている、大人たちも至って人間的に描か
れている。
「岩波少年少女文庫」あるいは名称が変わっているあもし
れないが、依然、岩波から出ている。
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