なだいなだ『娘の学校』(ちくま文庫)「なだ塾」の真髄
初版は1969年、中央公論社から刊行されたが現在は「ちく
ま文庫」として出ている。電子書籍でも読める。
昔は親が子どものお師匠さんになることが出来た。作家であ
り、精神科医でもある、なだいなださん、実は四人の娘がおら
れた。そこで当時、四人の小さな娘さんたちの先生になった。
コンセプトは「世界という大きな本」を教室とも、教科書とも
として」教えるのである。狭い視野からではない。
ナダ塾の塾長にして先生の、なだいなださん、未来のレディー
を相手に学問を、つまり哲学を説こうとする。もっとも実は生意
気盛りの娘たち、デカルト精神に基づく雄大な訓示も、パパの髭
の人間的意義に触れざるを得ないのだ。
講義のテーマは多岐にわたる。音楽、読書、文学、政治、人生
論、自由、ヒューマニズム、性という具合にジャンルは多彩、そ
の中で当時人気があったモンキーズ、そのファンである娘たちに
ビートルズの魅力を説いて、古典音楽とジャズを差別するような
考え方が面白いというべきか。
この教室が「調子外れの音楽教室」と名づけられているのは、
例えば、創造の意義にふれたかと思うと、突如、革命の話に脱
線するからである。この調子外れを単に、面白いと思うかどうか
で評価は変わりそうだ。なださんは「本の価値とは読む人間こそ
が与えるものだ」この言葉は含蓄に富むと思う。
特筆すべきは、なださんは、子供である娘たちを自分と対等な
人間として扱っている。そしてそのスタンスで語りかける、とい
う形の随想録のようなものだが、ここでは、新しい親子の人間関
係が娘たちの微笑ましい姿とともに、はっきりと浮かび上がる。
あとがきの最後に、こう書かれている。
「私は、読者が、この本に書かれたことを知るよりも、やさし
いことを書くのと、やさしく書くことの違いを、この本を通して
、知ってもらいたいと思う」
私はなだいなださんの誠実さに心から半ば惚れ込んでいる人間
である。そのスタンスは穏やかにして毅然としているのである。
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