ルーマー・ゴッデン『河』1946,少女時代の回想、映画化されて著名
1951年にジャン・ルノワール監督により映画化されている。
作者のルーマー・ゴッデン、Rumer Godden 1907~1998,生後間
もなくインドの渡り、少女時代を現地で過ごす。14歳で最初の
詩集を出版、一時バレエに転向したが1935年Chinese Puzzle
、以来小説を真筆、「黒水仙」これも映画化された。
インドのベンガル州の流れている一本の河、だがこの作品に
盛られている思想を表すために、別にインド河とは限らず、ど
こを流れていてもよい。河にはそれぞれ異なった持ち味がある。
どこを流れている河でもいい。これと同じように、家族もそれ
ぞれ独自の特徴がある。
インドの川のほとりに製麻工場を経営しているイギリス人の
家族が住んでいた。夫婦と4人の子供、長女のビーは理性の勝っ
た美しい少女だった。次女のハリエットは姉ほど美しくはなく、
いつも夢を描いて詩を書いている。長男のボギィはやんちゃだっ
たが、生きものが好きでヘビやトカゲを相手に遊んでいる。三女
のヴィクトリアは天使のように純粋で無邪気な少女、父親はいつ
も仕事に追われていた。母は家事に忙殺でちかいうちに5人目が
生まれる。
河と同じように、この家族も、平和な家族もあらゆることが変
わっていく。ハリエットは成長に伴う痛みに悩んでいる、いやが
おうでも全ては移り変わる。
ある日、第二次大戦で負傷した片脚のジョン大尉が現れる。ハ
リエットにはなぜ彼が毎晩来るのか分からない。大尉は最初、ヴィ
クトリアを可愛がり、ハリエットはそっけなく扱った。ビーもハリ
エットもこの青年将校を無関心を装ったがやはり気になる。大尉は
ビーの美しさに惹かれるが、最後は詩人的なハリエットの勇気と人
間愛にふれて生きるチカラを取り戻し、この一家から去っていった。
この物語の主人公はハリエットだろう、微妙に刻々と変化する少
女時代の彼女の鋭い感受性を通して、この河のほとりにある一家の
生活を描き出す。菩提樹の下にコブラがいるといわれ、その脱皮を
見るためにボギイは噛まれてて死んでしまった。赤ん坊が生まれる
が、市も誕生も全て何もなかったように進んでいく。だがそれはハ
リエットには耐え難いものだった。「時の歩みと河の流れをとめる
ことはできない」という、いつか自分の言った言葉を思い出した。
基本は著者の少女期を生きたインド時代の回想である。
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