アメリカの虎の尾を踏んだ日鉄、USスチール買収への固執は日米関係への破壊になりかねない。対日戦勝利のどんでん返し


まずは現職のバイデン大統領が本日、日鉄のUSスチール買収
阻止を宣言した。日鉄はいたって意固地に「買収が成立すると
確信している」、だが大統領は現職も次期トランプ大統領も、
日鉄のUSスチール買収においては阻止は完全に一致している。
日鉄は「今年中にはクローズする」だが、事態は日米関係の亀
裂を生みかねないものだ。

 日本の超大企業のアメリカ企業の買収は今までアメリカも煮
え湯を飲まされている。極端な例は東芝によるアメリカの原発
企業ウェスティングハウス、WH社の買収である。結果として
この買収の結果はWH社の破綻、東芝の解体につながった。

 日鉄はアメリカからすれば中国の製鉄事業への長年の協力の
事実、宝山製鉄所への経営参加、など親中企業と見なされてい
る。事実そうである。もっともUSスチール買収開始前後から、か
なり露骨に中国からの脱却を図っているようだが、今までの実績
が消えるわけではないし、日鉄社内にはりめぐらされて中国コネ
クションは容易に払拭できるものではない。

 だが根本は象徴的意味である。いかに衰退したUSスチールとは
云え、アメリカをまさに代表する企業である。対日戦の遂行、日
本への完全勝利はUSスチールの力なくして不可能であった。日本
の無条件降伏を引き出した勝利の象徴的企業、USスチールだが、
これが「日本製鐵」Nippon Steelに買収されるとしたら栄えある
対日戦勝利を21世紀にどんでん返しされる、という皮肉な歴史的
図式になりかねない。これこそアメリカの虎の尾を踏むことであ
る。

 日鉄はなぜそれほどUSスチールにこだわるのか、表向きは「
脱炭素を極める」などと虚飾の理由づけを口走っていたが、要は
日本の将来に見切りをつけたからだ。が従来の親中路線、中国の
鉄鋼産業の育成も従来の冷戦にまさる米中の対立、中国の軍事国
家化、侵略性の激化で中国にも見切り、アメリカに軸足を置きた
い、そうなるとUSスチールの持つ高炉、電炉はその大きな要素と
なり得る。「もはや日本にも中国にも・・・・・・」といえば、
いじまし過ぎるが、心はただアメリカのみということだろう。

 だがアメリカの虎の尾を踏んでいるという自覚があるのやら、
つまるところ、ないわけである。アメリカSECの審査報告を形式
的にはアメリカ大統領も待つにせよ、これは高度な政治問題であ
る。決してUSスチールを日鉄の子会社にしてはならない、という
鉄の意思がアメリカ大統領にはあるわけだ。それを多少でも理解
すれば日本の政治かも日鉄にUSスチール買収の断念を暗にでも、
申し入れるべきだと思うが、実際は日鉄ベッタリであり、日本の
マスコミも日鉄一辺倒の記事ばかりである。これはすなわち、全
てが破綻するという結果の招来を確実にするものだ。

 訴訟にすると日鉄は何ふり構わぬ手段を咆しているが、いまも
って大局を全く把握できていないということである。


アメリカの象徴的企業 USスチールの製鉄所

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