安藤鶴夫『巷談本牧亭』1963,直木賞受賞作、実質、伝統芸能に吸い寄せられた人のドキュメンタリー、湯浅喜久治についても

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 安藤鶴夫とは?実際、その著書を読むことって現実、なさ
そうに思える。ただ演劇評論家、しまも寄席関係の、という
漠然たるイメージは誰しも持つだろう。1908~1969,戦前
、都新聞に記者として途中入社、演芸関係の欄の執筆を行っ
て戦後は移行した東京新聞、すぐに退社、演芸評論家、だっ
たが文学的才能もあって、その発露は『巷団本牧亭』、タイ
トルから寄席の世界を舞台にしていると思うだろう。事実、
そうだ。

 安藤鶴夫は例えば以前の記事で「湯浅喜久治」に関連して
、とあの正岡容のライバルで暴力沙汰もあった、という。正
岡容は1904~1958,ちょっと早かった。

 さて直木賞受賞作となった『巷談 本牧亭』だが、「巷談」
は噂話、という程度の意味だろう。実質、ドキュメンタリー
小説というべき内容だ。日本に唯一残っている講談の寄席「
本牧亭」を中心とした、伝統的な庶民芸能に関わる人たちの、
いささか風変わりな生きざま、死にざまを述べている。基本
はドキュメンタリーと云うべきだが、まったく事実は小説よ
り奇なり、とはこのことである。

 まずは著者の安鶴に設定が似ている人物が登場する。近藤
亀雄という男で経歴も趣味も安鶴そのままというべきか。演
劇評論家である。「深くなるほど世間は狭い」を地で行くよ
うな人物だ。なにせ扱う世界が特殊である。だから、いまど
きそんあ人間がいるのか?と怪訝に思える奇人や、やたら古
風で奥ゆかしい時代離れの人情とか、なんとも突飛なおかし
な出来事がしけた世相と絡んできらめいているようだ。まあ、
粋な安鶴が江戸っ子のユーモア、ペーソスを縦横に織り交ぜ
て読ませる。

 「春高楼の」に始まって「寒い日」で終わる十五の巷談で
ある。それぞれ短編と云うか、ショートだが実は全体で大ま
かな筋の流れがあるような。実際の体験、見聞を描いたもの
だから芸術祭賞を受けた服部伸、これは「芸術祭男」と言わ
れ早世した湯浅喜久治もどきか、人間離れしてような桃川燕
雄という講釈師、古い芸能を守る人たちが滋味深く!興味深
く述べられる。

 日本唯一の巷談の寄席の本牧亭、演芸評論家上がりの作家
が過ぎ去った芸能、芸人を慨嘆的に懐かしんでいるかのよう
だ。

 だから早世の芸術祭男、湯浅喜久治について「湯浅喜久治
という男、いつも、・・・・・すね」で「で」抜きである。
何かというと「実アすね」、「お美代という女は、『や、だ、
よ、や、だ、て、ば』と区切って話した。それが変にきたな
らしい色気に聞こえた」

 湯浅喜久治

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 でもそれもこれも起承転結が揃いすぎて落語のようだ。ま
さかもう若い人は読まないだろう。私だってなかなか読むと
云う気になれなかった。
 

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