ボーヴォワール『女ざかり』上下、紀伊国社書店、サルトルらと生きた自己形成史

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 言うまでもなくボーヴォワールの教養小説、自己形成史とい
う内容で、それ以前、「娘時代」は少女時代からの自伝である。
「娘時代」までも戻すとフランスのやや古風な家庭に生まれ、
育った少女が、その軛を打ち破っていかに自由な精神を持つ解
放された人間に成長していくか、という自伝の物語である。教
養小説といったが、ちょっとそんな余裕はないというのか、文
学的というより妙に心理学的である。ちょっと理屈っぽい。

 『女ざかり』は少女時代を通り抜け、ボーヴォワールになり
かけている、という趣である。いたって社会的視点が活発では
ある。自分の成長を語ることで時代をも鋭く記述している。ま
ずは21歳で新たな仕事につき、自立的に生きるという自由を確
保したということになる。ただし並の若い女性ではないのだ。

 「私にとって大切なことは、一人ひとりの他人と自分との個人
的な関係だったし、私は貪欲に幸福を求めていた。突然、歴史が
私に襲いかかり、私は木っ端微塵にされた」

 その歴史とは第二次大戦である。この緊迫して戦争の予感の時
代にサルトルと出会い、その仲間とも生活し、多くのエピソード
が生まれている。ボーヴォワールにはやはり非凡な視点と観察力
が備わっている。サルトルらの若き日の群像を見事に再現して描
いている。堅苦しい知的な分析ばかりでもなさそうで、自らの性
的な体験も小出しながら述べている。サルトルとは若い時代から
恋人同士であり、ともに作家を目指していた。ともかく哲学に凝
るサルトル、ボーヴォワールはサルトルから『嘔吐』のベースと
なりそうなイメージを語った手紙を受け取る。ボーヴォワールは
ひたすら小説の勉強に集中しているようだ。サルトルは文学にデ
ビューしたと思ったらすぐに出征した。しかしサルトルは脱走し
れレジスタンス運動に身を投じる。ボーヴォワールは協力する。
サルトルを通じて、ボーヴォワールは時代とつながり、さらに自分
も文学デビューを果たした。・・・・・簡単に読めるわけでもない
ので私自身、大江健三郎先生の解説文を大いに参考として読もうと
したが、正直、・・・・・難解であった。まだまだ格闘しないと、
意味の十分な理解に及びそうはない。

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