アンドレ・マルロー『反回想録』1977,新潮社、20世紀の主要事件、主要人物を紀伝体!で自在に描く
ド・ゴール政権で長く文科相を務めたアンドレ・マルロー、
『王道』は代表作とされる。1901~1976,考古学や東洋美術
にも深い関心を持ち、他方で超現実主義風の文章も書いた。
死の翌年、日本で翻訳が刊行された。長編である。行動派の
知識人、マルローの同時代的な回想録である。非常にものの
捉え方のスケールが大きいのは確かで、また硬派な内容であ
る。別に自伝というわけでなく、20世紀の政治的、文化的な
問題がマルロー世界観で描き出される。
で「反回想録」というタイトル、その理由は「私自身にと
ってしか重要でない事柄が、どうして真に自分にとって重要
と言えようか」これも、まごつかせる表現で意味深である。
回想録といえば通常、私的な性格を持つが、それを大きく超
えて描き出す、という意図なのだろう。描き出されるのは、
云うならば20世紀の叙事詩であり、現代のオデッセイと云う
べきか。
1923年、22際の若さでインドシナ植民地を訪問、そこから
マルローのアドヴェンチャに見した革命、思想探求の人生が
始まった。彫像盗掘者から植民地運動の旗手へ、やがて中国
を知り、以後、モンゴル、インド、日本へと足を伸ばし、さ
らにエジプト、イラン、アフガンなど中東、オリエント世界
にも足を伸ばし、考古学的調査を行う。その後、レジスタン
スに参加廷臣、戦後はドゴール大統領の片腕的存在として中
国、インドなど訪問。毛沢東、ネールと会談。
そのような世界スケールのマルローの活動が編年体でなく、
その作品名を付しての「アルテンブルクの胡桃の木」、「西
欧の誘惑」、「王道」、「人間の条件」、「反回想録」とい
う全部で五部下ら成り立つ。
「アルテンブルクの胡桃の木」では祖父の自殺、その弟が
親しかったニーチェの狂気、エジプトの大ピラミッドの奥深
い一室とヒトラーが最後までたてこもった地下司令部、シヴァ
の女王の都などが変幻自在に結びつけられる。
ともかく翻訳本で二巻、2段組の編集で700頁を超える。20
世紀の重大事件が紀伝体!式で語られる。ドゴール将軍のその
人となりを描いた文章が何とも貴重でおもしろい。ドゴールが
初めてマルローにあったとき、その後「ついに私は人間に出会
あった」と叫んだ。これはナポレオンがゲーテを評しての言葉
だが、その伝説を否定し、ドゴールの印象を述べる。
なお翻訳では原書にはない「日本の挑戦」という章が付け加
えられている。
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