草野心平『わが生活の歌』1966,社会思想社・現代教養文庫,驚くほどの植物への知識


 もう今はない社会思想社、昔は書店の本棚にツヤのいいカバ
ーの文庫本が並べてあった。「現代教養文庫」である、教養文
庫の中の一冊、草野心平著『わが生活の歌』である。

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 内容は三部に分かれ、「食いもの断想」、酒と酒にまつわる
生活の断面や交友についての「酒と酒場の話」、花や野菜、自
然の生き物、について書いた「私のオモチャ」この部だけで百
篇近い、短文がある。

 戦後はみずから居酒屋を経営した草野心平、食べ物や酒、自
然の生き物、獣から鳥、魚、蛙まで、わざわざ故郷の福島県に
モリアマガエルを見に行ったこともあった。それらを実に心か
ら切実に描いているのだ。詩人だが文章力の正確さは実に秀で
っていると思う。特に、植物についての知識の豊富さ、深さは
驚くほどで、・・・・・別に植物学を学んで、というのではな
く、自然への鋭い観察眼の結果である。その基盤に詩人の資質
がありそうだ。酒はよく飲んで、酔っ払った日々の思い出を語
る文章も、実に理路整然、過不足がない、論理の筋が通ってい
る。曖昧な詠嘆はなく、力強い感情の勢いだろうか。

 戦前は中国の南京、汪兆銘政権の中にいた。青春、若い時代
を過ごした中国での記憶、経験がそれらの根底にあると思える。

 詩人だが優れたエッセイストでもあった草野心平、やはりそ
の魂の中にはある意味、黄金郷があったようである。

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