リロ・イェンセン『地下室の冒険』ドイツの児童小説家の描く戦後のドイツ(西独)の子どもたちの生活


 作者はリロ・イェンセン、Lieselotte Jensen,ドイツの女性
作家、主に児童小説を書いた。ペンネームは略してリロ・イェ
ンセン、Lilo Jensentoshita.1906年3月、ライン川の支流、モー
ゼル河の河畔に生まれた。結婚後、少年少女向け小説を書き始
めた。戦後はデンマークに住んだ、という。1950年の作品が『
地下室の冒険』である。

 戦後、終戦後のドイツ(西独)の少年少女たちは、いったいど
のような生活をしていたのか、である。もう古書だが、貴重な
児童小説なのである。

 第二次大戦後、間もない西独の荒廃した都市である。季節は
冬で、極寒、どの家庭も燃料の調達に悩んでいる。そこから子
供たちの石炭泥棒が始まったのである。それがきっかけでビッ
ト、ロルフの二少年とレルという少女の三人組が空襲による焼
け跡の地下室に、闇屋の秘密の倉庫があることを発見する。そ
こから多くのスリルに満ちた冒険が始まった。トム・ソーヤー
の乗りである。倉庫に持ち込まれていたそこで見つけた350足を
子供用ブーツを街の貧しい少年少女たちに配給するまでにこぎ
つけることが物語の骨子である。

 三人組の子どもの中で、アメリカの伯父さんから送ってもら
った、かなりだぶだぶのオーバーコートを着ているビットは、お
父さんが出征し、膝を負傷し、歩けなくなったため子供でも働か
ねばならず、それだけに一番、度胸があり、大胆でリーダー的な
存在である。ロルフは誠実な父親と優しい母親、また可愛い二人
の妹がる。ロルフはいつもビットに、そのかったるさを指摘され
ながらも、常に忠実な助手であろうとする。レルはまだソ連に抑
留されているかどうか、帰ってこない父親、で母親と二人暮らし
である。いつも快活で適切な知恵を出してグループの仕事を巧み
に導いていく。

 これらの子供たちの性格と活動ぶり、をそれぞれの家庭を背景
として、トム・ソーヤーはハックルベリーに劣らぬほど、生き生
きと描かれていると思う。様々なエピソードによって、戦争で甚
大な損害を受けでもドイツの家庭は依然として毅然たる道義心と
いうのか、保持していることを伝えている。終戦後の物語だが、
暗さ、陰鬱さはほとんど感じない。ドイツの復興、経済成長も固い
、と思わせるような内容で事実、歴史はその通りになった。西独の
奇蹟である。

 もちろん、あまる深みもないが、少年探偵団的なスジが面白い。
児童小説と思えば、もちろん「クオーレ」にははるかに及ばずと
も、上々の出来だと感じる。ただアメリカ至上主義的な記述、見方
が多くちょっとどうかな、と感じさせる。


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