心臓外科手術、1962年(昭和37年)当時でさえも赤字、今や手術は大赤字、健康保険点数で病院が維持できないのは当然
東京での病院閉鎖が相次いでいるという。基本、日本の医療
は公的健康保険制度で世界に誇るべき「安心」な制度とはいう
が、健康保険料の毎月の支払いは実に多額である。他方で、厳
重な健康保険制度による医療行為、処置への点数、1点が10円だ
が、あまりに現実の経費、医療資材の価格との乖離が激しい。
わかり易い例では歯科で接着セメント、昔は「リン酸亜鉛セメ
ント」などの時代ではなく、その後のグラスアイオノマー、こ
れは現在でも使っているが、接着性レジンセメントの時代であ
る。一回の処置でその点数は17点、170円だがその商品価格の
高いこと、まず価格の1割分も保険点数に反映されいない。
さて外科手術には数しれぬ多くの機材、医療用具、製品、薬
品を使うし、さらに人件費、保険点数にそもそも反映されてい
ない、数多くの医療資材を使用する。だから古来、赤字である。
最近の医療用機材、用品、薬品の価格高騰、そもそ不足の用品、
器材、薬品が多いのである。1962年当時の比ではない。東京で
も島根県石見でも健康保険点数は同じである。東京で「病院」
の経営が成り立つはずはないと思わる。
その1962年、昭和37年、東京女子医大の榊原仟(しげる)氏の
文章である。
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榊原仟
「心臓外科の手術をやると、いったいいくら損失が出るか先生
、ご存知ですか?」
とある病院の先生が私(榊原)に聞いてきた。
「外科手術が赤字なのはわかってますが、どれくらい損失が出
るのやらわかりません」
「だから大学の先生は呑気すぎるんですよ」
とひどく叱られてしまった。
その先生は地方ある病院の外科医なのだが、ある時、いったい、
それくらい損失が出るのか、計算してみたそうだ。ただ概算であ
る。見せられrたその計算を見せられ、私は驚いた。血管を縫う糸
が1本120円もするとは私は知らなかったし、人工心肺に使う管、
使い捨てになるが8500円だという。ガーゼや人工心肺を洗浄する
ブドウ糖など多くの資材、器材、薬剤を細かく計算すると、一回
限りに使い捨てものの原価だけで14680円かかる。
人工心肺の価格が日本製でも150万円から350万円、かりに100
回使えても1回15000から35000円、
この病院は乙表というものを採用し、この場合の手術での健康
保険による入金が9800円くれる、血液の代金は44000円入るが、こ
れはそのまま病院が血液銀行に支払う。だから一回の手術で2万円
以上の損失だが、これには20名以上のスタッフの賃金や消毒のため
の清掃費、また光熱費は入っていないのだ。それらも入れたら外科
手術は大変な赤字ということだ。
「なるほど、確かに」と私は唸った。
確かにこういう話がある。アメリカでは心臓外科手術1回でベンツ
一台分の水揚げがあるが、日本では自転車一台分だと書いている文
章を読んだ事がある。
だから私がアメリカに行くと、「お前は億万長者だろう」と言わ
れる。すでに3000以上の心臓手術をやったといえば、アメリカ人
はそう思うだろう。事実は全く逆なのだ。
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